項荘の剣舞


韓国紙セゲイルボ・コラム「説往説来」

 「力抜山気蓋世…」。力は山を抜き、気概は世をおおうという意味だ。垓下城で劉邦軍に囲まれて四面楚歌状態に陥った項羽。愛妾の虞との別れを悲しんで歌った垓下の歌の一節だ。“西楚の覇王”項羽は大した武将だった。紀元前207年10月、鉅鹿城の戦い。項羽は黄河を渡ると、飯を炊く釜や壺を壊して乗ってきた船を沈めた。破釜沈舟だ。そして10万の軍で秦の50万の大軍を破った。

 歴史は反転するのか。その年12月に開かれた“鴻門の宴”。秦の首都咸陽の東南にある鴻門で秦を破った項羽は劉邦を呼んだ。項羽の軍師、范増は考えた。「劉邦を除くべきだ」。どうしてそう思ったか。函谷関で秦軍20万人を生き埋めにした項羽と咸陽に先に入って徳治を敷いた劉邦。どちらが勝っているか。范増は宴席で項羽の従弟、項荘に剣舞をして近づき劉邦を討つよう命じた。成功していれば歴史は変わっただろう。

 しかし劉邦の戦略家、張良は護衛の樊噌にこれを防がせた。項羽の前に出た樊噌の言うには「(劉邦に)恩賞を与えるのではなく、奸臣の離間術にだまされて功臣(劉邦)を殺そうとされるのですか」。豪傑の項羽は結局、劉邦を生かしたまま帰した。それが敗着だとは誰が知るだろうか。項羽は結局、垓下城で敗れて敗走し死んだ。

 2000年以上前から伝わる楚漢争覇の核心的な内容だ。

 中国の王毅外相が語った。「項荘舞剣意在沛公」。項荘が剣舞を舞った意図は劉邦を殺そうというところにあるという意味だ。韓半島への高高度防衛(THAAD)ミサイル配置は、北朝鮮の核を口実にして中国を監視しようというものだとの不満を含んだ言葉だ。

 適切な言葉だろうか。剣舞は誰が舞っているのか。“核剣舞”を舞っているのは北朝鮮だ。若い金正恩が剣を手にしているのだ。中国は核剣舞を抗米戦略に利用している。北の剣舞は意在(韓国の)赤化であり、意在抗米ではないのか。先の言葉は王外相が言うべき言葉ではない。彼はこんなことも言った。「司馬昭之心路人皆知」。北朝鮮の核を利用して米国の首を絞めようという中国の意図は皆がお見通しだ。

 『貞観政要』にはこんな言葉が出ている。劉洎が唐の太宗にいった言葉だ。「国家の長久を望むなら優れた話術と博識を好んではならない」。まして隣人も納得させられない我田引水の言葉であれば、言うまでもないだろう。

 (2月16日付)

※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。