バンコクの鍋料理


地球だより

 タイと日本は熱帯と温帯で、天候も気候も別世界と思いがちだが、意外と両者はリンクしている。無論、熱帯のタイでは1月、2月といえども日中は30度を超すことが多いが、朝晩は日本の初秋のようなさわやかな気候だ。だが日本が寒気団に襲われて、震え上がる時、タイも長袖にしないと寒かったり、たまにジャンパーが必要なほどに冷えこむことがある。

 とりわけ、今年の異常気象は世界的だ。日本が大雪に見舞われた時、タイもこれまでになかったような寒さに遭遇することになった。

 1月下旬、バンコクでも日中の温度が16度、朝には12度まで下がり、街中にはジャンパー姿が目立ったし、郊外では路傍でたき火姿も見られた。

 そうはいっても冷え込む時期はいつも短期間と決まっている。そのためバンコク市民は「寒い、寒い」と口にはするものの、結構、つかの間の冬を楽しんでいる風情もある。

 こうした日の夜は、バンコク都内各地の飲食店で温かい鍋料理が人気となる。タイ人は「タイスキ」が大好きだ。この料理はタイ人が日本を旅行して、シャブシャブにヒントを得てタイ風にアレンジしたものだが、結構、日本人にも人気がある。名前こそ「すき焼き」を想起させるが、タイ風シャブシャブだ。

 なお寒い晩には、タイ東北料理である「チムチュム」という鍋も好まれる。「タイスキ」は屋台というわけにはいかないが、「チムチュム」は屋台でも食べられ、庶民的人気があるのだ。

 いずれにしろ暑い日であれば、ちょっと昼寝して英気を養い、寒い日はたまにしか来ない寒気を楽しむように鍋をつつくタイ人の柔軟性には見習うべきものがある。

(T)