“本物”論争


韓国紙セゲイルボ・コラム「説往説来」

 1849年、朝鮮24代王の憲宗は後嗣を残さず他界した。朝廷は後を継ぐ血縁者を捜し、江華島に流されていた李元範(哲宗)が選ばれた。曾祖父が思悼世子(21代英祖の世継ぎだったが父の命で非業の死を遂げた)だった。哲宗が19歳で即位する前の江華島での生活は困窮し、薪の行商や農業でやっと生き延びていた。漢陽(現ソウル)の両班たちは“江華の坊ちゃん”と皮肉った。哲宗の在位14年間は姻戚の安東金氏が権力を振るう“勢道政治”が絶頂に達した。政治に疎い哲宗は収拾する意欲もなく、酒色におぼれる放蕩な生活を続けて病死した。血縁による王位継承が望ましくない事例の一つだ。

 16代国会の時、後輩の記者が慌てて飛んできて「金弘一議員がおかしい」と報告した。「脇を抱えられてよろめきながら歩いている。具合が悪そうだ」というのだ。その記者は金大中(DJ)元大統領の長男の金議員をその日初めて見た。金議員は1980年、保安司令部に連行され拷問を受けた。耐えられず自害を試みて首を悪くしたという。二男の弘業氏もその年に逮捕され、自宅に軟禁される苦難を経験した。父親の生前に長男は3度、二男は1度、(国会議員の)金バッジを付けた。“DJの七光り”のおかげだが、そうなれなかった三男の弘傑氏が昨日、野党の共に民主党に入党し、話題になっている。

 弘傑氏は入党式で「共に民主はDJ精神と盧武鉉精神が合体した60年野党の正統な本流」だと語った。座長(権魯甲)、秘書室長(朴智元)を含むDJ側近(東橋洞系)が大挙して離党した共に民主としては“DJ嫡流”をアピールする好材料だ。東橋洞系は「子息が行けば民主党の正統性も行くのか」と反撃し“DJ嫡流”論争が勃発。“李心”(DJ夫人、李姫鎬氏の意中)が働いたかどうかをめぐる攻防まで起こっている。

 DJ精神は統合がキーワードだ。逆の方向に進む双方がDJ継承を云々するのはコメディーだ。血縁=DJ嫡流という等式は時代にも合わない。弘傑氏は特に、大型収賄事件で有罪判決を受けている。共に民主が叫ぶ革新とは相容れない。

 与党は与党で真朴(真実の親朴)論争で騒がしい。大邱では、真朴では足らずに“真真朴”という言葉も出ている。元3選議員の朴昌達氏は「渡りの真朴は何もやっていない」といってセヌリ党離党を宣言した。総選挙で支持を得ようとするなら、“元・現大統領マーケティング”ではなく政策で勝負すべきだ。

 (1月26日付)

※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。