パラグアイ川船上の環境論議


地球だより

 パラグアイ北東部(アルトパラグアイ県)では、恐ろしいほどの勢いで森林破壊が進んでいる。極僻地にまで開発の手を伸ばす人間の飽くなき欲望をまざまざと見せつけられた。

 一方で、先住民をはじめとする多くの住民は、電気や清潔な飲料水さえまともにない隔絶された状況にある。

 取材中、雨季の同地ではパラグアイ川を運航するチャーター船以外に唯一の交通手段である週に一度の定期船に乗る機会があった。

 定期船の甲板で、他の乗客達とパラグアイ川に沈む夕陽を眺めていると、バックパッカーらしい欧州系の若者と、中年のブラジル人らしき男性の激しい環境論議が耳に入ってきた。

 若者は、「牧畜のために森を切り開き多くの土地を利用する肉食中心の文化や、開発を進める飽くなき欲望が環境破壊につながっている」と批判する。

 一方のブラジル人男性は、パラグアイ北東部で小さな牧場を経営していると言い、「牛肉などを食卓に並べたいという願いは悪くない」「僻地に住んでいる我々も文明的な生活を送りたい、開発を通じてより良い生活を求めてどこが悪い」などと反論する。

 結局、両者の背景や生活環境などが違いすぎ、論議は平行線のまま終わってしまった。会話に耳を傾けながら、森林破壊を糾弾することは簡単だが、それを食い止めるためには植林推進だけでなく食習慣まで根本的に見直す必要があるのだろうか、などといま一度考えさせられる機会となった。

(S)