天野事務局長、3選出馬へ


 国際原子力機関(IAEA)の天野之弥事務局長(68)は今秋までには正式に3選出馬を表明する予定だ。同事務局長は19日、ウィーンのIAEA本部で開かれた記者会見で明らかにした。

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天野之弥生事務局長(2016年1月19日、IAEA理事会で=IAEAのHPから)

 天野事務局長は「加盟国の中では私が3選に出馬することを願う声がある」と指摘し、「IAEAの過去の運営を評価し、私が引き続き事務局長の職務を継続する声があることは感謝だ。IAEAにとっても継続性が重要だ」と述べ、3選に出馬する決意を明らかにする一方、正式の出馬宣言は今夏末か秋になる予定だと述べた。

 天野事務局長は2009年、日本人初のIAEA事務局長に選出され、同年12月に就任。2013年3月、理事会で再選された。天野事務局長は、「2003年以来の懸案だったイランの核問題が包括的解決へ動き出した。もちろん、IAEAの職務はイラン問題だけではなく、福島第1原発事故への対応など多くの課題が控えている。それゆえに、私が3選されることで、その職務が継続されることは大切だ」と強調し、継続性の重要性を繰り返し強調。同時に、3選への批判の声に対しは、「IAEAは3選を禁止していない」と説明した。ちなみに、ハンス・ブリックス元事務局長は4選、通算16年間(1981~97年)、モハメド・エルバラダイ前事務局長は3選、12年間(1997~2009年)事務局長を務めている。

 天野氏の3選出馬の話を聞いて、同氏の事務局長誕生が非常に難産だったことを思い出した。事務局長選(2009年7月)で最有力候補と終始見なされてきた天野大使の支持票がなかなか当選ライン(有効投票の3分の2)に到達できず苦戦したからだ。
 理事国35カ国の場合、当選するためには24票の支持国が必要だが、天野氏は通算5回の投票で23票止まり。当選に1票足りない状況が続いた。そして6回目の信任投票では、支持票は23カ国と変わらなかったが、反対票を投じてきた理事国12国の1国が突然、棄権に回った。そのため、天野大使は有効投票34票の3分の2の当選ラインを突破できたというわけだ。非常にドラマチックな展開があったわけだが、その舞台裏では激しい政治的駆け引きがあったことを伺わせたものだ。

 問題は反対票を投じてきた12カ国の理事国の中で、どの国が6回目の信任投票で棄権に回ったかだが、これは今に至るまで不明だ。日本側にとっては恩人の国であり、反対派にとっては裏切り者となった“その一国”はどこか。事務局長選は秘密投票だから、理事国の間ではさまざまな憶測が当然流れた。

 当方は一度、天野氏に直接、国連職員食堂で聞いたことがある。すると、同氏からは、「外交問題には答えられない」と一蹴されてしまった。だから、どの国が日本初のIAEA事務局長の誕生を手助けしたか、今日まで謎だ。有力な説としては、①非同盟運動諸国(NAM)の理事国説、②中南米理事国説があった。いずれにしても、天野氏が正式に3選に出馬した場合、対抗候補者がなく、理事会ですんなり決定する可能性が高いと予想される。

 天野氏が3選され、任期4年を継続されるとしても、今年24年目を迎える北朝鮮の核問題をはじめ、原発の安全問題など課題は山積しているだけに、同氏にとって健康管理が更に重要となることは間違いないだろう。

(ウィーン在住)