バチカン内に同性愛ネットワーク


 ローマ・カトリック教会の今年最大イベント、世界代表司教会議(シノドス)を明日に控えた3日、バチカン法王庁教理省の職員(43)が記者会見で自分が同性愛者だと告白した。欧米メディアは一斉に速報で流した。バチカン放送独語電子版も同日、「バチカン高官、告白し、辞任した」というタイトルで写真付きで流した。異例のことだ。

 同性愛者を告白した教理省職員はポーランド出身のハラムサ神父(Krzysztof Charamsa)だ。同神父はイタリアの日刊紙コリエーレ・デラ・セラ(3日付)とのインタビューの中で、「教会は同性婚者カップルを公平に扱うべきだ」と要求し、「同性愛者も家庭が必要だ」と述べている。同神父によると、教会では、同性愛の性向があったとしても罪とは見なされないが、同性愛的、ヘテロ的性関係を持った場合、罪と受け取られている。なお、記者会見には同神父のスペイン人男性パートナーも同席した。

 バチカンのロンバルディ報道官は同日、イタリアのAnsa通信社に対し、「ハラムサ神父は教理省の職務と大学の教鞭のポストを失った」という情報を確認したうえで、「彼の決意は尊重するが、バチカン教理省内で聖職や大学の教鞭を継続することはできなくなった。それ以外の問題は彼が所属する司教区の権限だから何もいえない」と説明した。

 バチカンで4日、3週間の日程でシノドスが開幕した。そこでは家庭、婚姻問題などについて話し合われる。同時に、同性愛問題も言及されると予想されていることから、メディアはシノドスの行方に関心を注いでいる。そのシノドスの前日、教理省職員の神父が自分は同性愛者だと告白したわけだ。計算された行動であることは間違いないだろう。神父自身も、「自分が告白することで教会が同性愛問題で目覚めることを願っている」と語っているからだ。ロンバルデイ報道官は「シノドスの前日に同性愛を告白することで、(この問題を話し合う)シノドスへの圧力が高まることは必至だ。非常に無責任な行動だ」と厳しく批判しているほどだ。

 バチカンには同性愛クラブが存在すると久しく囁かれてきた。今回の神父の計算尽くされた同性愛告白はそれを裏付けている。それに対し、ローマ司教区のCamillo Ruini 枢機卿が4日付のコリエーレ・デラ・セラ紙とのインタビューの中で、「バチカンには同性愛ロビイストは存在しない」とわざわざ否定している。

 以下、バチカンや教会関連施設内の同性愛ロビイストに関する資料を紹介しよう。

 ①ローマ法王フランシスコ自身が2013年6月6日、南米・カリブ海諸国修道院団体(CLAR)関係者との会談の中で、「バチカンには聖なる者もいるが、腐敗した人間もいる。同性愛ロビイストたちだ」と述べている。バチカンは当時、南米法王の発言は私的な場所でのものと説明するだけで、否定はしていない。

 ②イタリア日刊紙ラ・レブッブリカによれば、前法王ベネディクト16世は2012年12月17日、バチリークス調査委員会(3人の枢機卿から構成)が作成した報告書の中に「バチカン内部に秘密の同性愛者ネットワークが存在し、枢機卿は脅迫されている」という内容にショックを受けたという。バチカン側は当時、この報道を否定した(「バチカンに同性愛ロビイスト存在」2013年6月14日参考)。

 ③オーストリアのローマ・カトリック教会サクト・ぺルテン教区のクラウス・キュンク司教は「神学セミナーや教会聖職者の一部に同性愛的(ホモセクシュアル)な雰囲気を感じることがある。彼らは特定な人物に強い関心を示す」と述べた上で、神学セミナーや修道院で同性愛者のネットワークが存在すると指摘。「彼らが教会や修道院で拡大、増殖していった場合、教会や修道院の存続が危機に陥る」と警告を発している(「教会内施設でホモ・ネットワーク」2010年5月26日参考)。

 なお、フランシスコ法王は4日、シノドス開催記念ミサで、「神は男と女を創造し、彼らが家庭を築き、永久に愛して生きていくように願われた」と強調している。

(ウィーン在住)