難民たちの人権


地球だより

 シリア難民の幼児の遺体がトルコの浜辺に打ち上げられた写真は、世界中の人々に衝撃を与えた。とりわけ実際に難民が押し寄せている欧州では深刻に受け止められ、その話題で持ち切りだ。

 パリ市内に住む友人のマリーエレーヌさんは、自宅の空き部屋にシリア難民の親子を受け入れている。彼女は2カ月前に難民がフランスにも来ていることを知り、人道援助団体の世話で家族3人を受け入れた。彼女は「やっぱり彼らの悲惨な状態を見ていられなかった。誰だって人間らしく生きる権利があると思う」と言っている。

 彼女の周りにも、自分のアパートの空き部屋を提供している友人が何人かいて、その数は日に日に増えているという。近くのカトリック教会の神父は信者に呼び掛け、使っていない建物ごと提供してもらっているという。その神父は「寄付さえ集まれば、1000人でも受け入れたい」と言っている。

 衝撃的な幼児の遺体の写真は、フランス人の難民への考え方を一変させた。その雰囲気は、日頃からアラブ系移民への嫌悪感を見せていたフランス人とは大違いだ。パリ西郊外ノジャン市の住宅局職員のジャックリーヌさんは「彼らは難民だから、早く認定してあげて、身の安全と住宅を提供すべきよ」と言っている。

 彼女は日頃、押し寄せるアラブ系移民に住宅を供給する仕事をしているが、これまでは「彼らはうそつき。収入があるのにないと言い、どこから来たかも本当のことを言わない」と悪口ばかり言っていた。

 それが今回は「彼らの事情ははっきりしている。命懸けで自分の国から逃げてきた難民を助けるのは、われわれの義務よ」と考えられないくらい積極的だ。彼女は週末になると難民支援の人道援助団体に食料や衣類を持っていっている。それほど心を揺り動かされているということだ。

(M)