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平均積雪量5cmの北京冬季五輪?


 アルペンスキーの昨年男子総合王者マルセル・ヒルシャー選手(オーストリア)は北京市で2022年、冬季五輪大会が開催されることに対し、「選手を無視した候補地決定に怒りを覚える」と述べている。同選手は「雪の無い場所でどうして滑降やスーパー大回転などアルペンスキー競技ができるか。国際オリンピック委員会(IOC)の決定はスポーツとは全く別の世界で下されている」と怒りを吐露している(オーストリア通信)。

 北京五輪準備委員会は、「雪が降らない場合、人工雪などでカバーするなど検討している」と述べ、雪不足の懸念に対して「根拠がない」と一蹴している。フィギュアスケートやカーリングなど氷上競技は北京市で開催できるが、アルペンやボブスレーなど雪上競技は北京市から90キロ離れた延慶と160キロ離れた張家口で開かれることになっている。

 IOC関係者も、「北京大会で最も心配しているのは雪不足だ」と述べている。IOCは実際、6月の評価報告書の中で、「張家口と延慶地帯は、年間降雪量が少なく、大会の開催には完全に人工雪に頼ることになる」と説明している。すなわち、IOCは先月31日、北京での冬季五輪大会開催は問題があると知りながら、開催地に決定したわけだ(海外反体制派中国メディア「大紀元」)。

 北京市で冬季五輪大会を開催することが決定したというニュースを聞いて、当方はカタールで2022年サッカー・ワールドカップ大会(W杯)の開催を決定した国際サッカー連盟(FIFA)幹部たちの腐敗、汚職問題を思い出した。IOC関係者にも久しく同様の疑いがもたれてきた。北京冬季五輪大会開催は“第2のカタール問題”といわれても不思議ではないのだ。

 技術的に、人工雪で不足分の雪を補ったとしても、果たして選手たちの競技に影響は出ないだろうか。例えば、サッカーで人工芝とそうではない場合、選手への影響は皆無ではないことは明らかになっている。アルペンスキーの滑降は時速100キロ以上のスピードで山上から下に滑り落ちていく競技だ。雪の質でそのスピードも当然変わる。

 会場予定地の延慶の平均積雪量はわずか5センチで、最少積雪記録は1センチだ(「大紀元」)。にもかかわらず、経済力と国家の支援を武器に北京市は楽々と候補地を獲得した。残念なことはミュンヘンやオスロが予算問題や国民の反対で開催候補を早々と辞退したことだ。

 北京の共産党政権は夏季・冬季五輪大会開催という名誉を獲得し、国家威信の高揚に五輪大会をフルに利用することは目に見えているが、IOC側は、世界の祭典に相応しい冬季五輪大会を開催するため北京側に必要なアドバイスを躊躇してはならない。IOCが“第2のFIFA”とならないことを念じるだけだ。

(ウィーン在住)