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子宮頸がんと性倫理


 重篤な副反応とみられる症状を訴える少女が多く出ている子宮頸(けい)がんワクチン問題。厚生労働省が接種の積極的な勧奨を中断してから、6月で2年になる。

 厚労省が接種の勧奨を再開するかどうかの結論を出しそうな時期になって、この問題への注目度がアップするが、慎重派と推進派との意見の隔たりは大きい。被害を訴える人たちは、接種後に起きた症状の原因究明を急ぐとともに、接種中止もしくは定期接種から外すことを求めている。

 推進派はこのままでは子宮頸がんで命を落とす女性が増えるのは確実だとして、早期の勧奨再開を訴える。副反応被害があったとしても、それはわずか。毎年1万人が発症し、約3000人が亡くなっている現状からすれば、接種のリスクよりベネフィットが断然大きいという。

 接種後、全身の痛み、不随意運動などで車いす生活を余儀なくされている側の立場になれば、同じように苦しむ少女をこれ以上出したくないと思うのは当然だ。一方、子宮頸がん患者を治療する婦人科医らがこの病気で亡くなる人を減らしたいと願う気持ちも理解できる。

 だが、不思議なのは、子宮頸がんで不幸になる女性やその家族を減らしたいと言いながら、発症のリスクを高めている性行動の乱れに警鐘を鳴らす医師がほとんどいないことだ。この病気は近年、20~30代の若い女性で増えているが、その背景に性行動の低年齢化があるのは間違いない。この性倫理の問題はわきに追いやられているのだ。

 また、メディアの報道も被害者側に重点を置く内容と、早期の勧奨再開を求める論調に分かれるが、性行動の低年齢化のリスクに触れる報道は、弊紙を除けば、皆無に等しい。今の社会で性倫理を説いても効果がないとみているのだろうか。子宮頸がんワクチン論争から、性倫理をめぐる社会の現状が浮かび上がる。(清)