黙ってると損? 韓国から


地球だより

 受信機の調子が悪く、ケーブルテレビが映らないという苦情の電話を事業者に入れた。もうこれで3度目。「いいかげんにしてほしい」と語気を強めて言うと、担当者は他の訪問サービスよりも優先させてすぐに修理しに来た。受信機を最新型に替えただけでなく、ダウンロードして鑑賞できる映画を数万ウォン分サービスして帰っていった。

 これは友人の韓国人の体験談だ。おとなしい相手には横柄、うるさい相手には親切-。こんな気質がまだ韓国人にはある、と友人はぼやいていた。

 記者にも最近、似たような体験がある。子供が通うスイミングスクールに翌月の月謝を払いに行ったら値上げを通告された。「なぜ値上げですか?」と聞くと、窓口の女性は「税金が上がって…」と言う。普通だったらここで引き下がるところだが、韓国生活が長くなるにつれて身に付いた図々しさ(?)から、つい「税金負担を利用者に押し付けるというわけですね」と言ってしまった。

 すると女性はしばらく黙り込んだ後、プレゼント用の粗品と1階コーヒーショップの利用券を差し出してきた。黙っていたら渡さなかったのは明らかだ。

 韓国は告発社会だ、と誰かが言っていたような気がするが、とにかく「自分が損をした」と感じたら黙っていられない人が多い。相手にその事情や理不尽さ、時には自分の心情告白までする。

 「語らずして察する」などと武士の美徳を気取っていては、誰も気付いてくれないのがオチだ。処世術に不可欠なのは当然だが、ひょっとすると外交の世界でも通じるかも。

(U)