民主主義は教育から エジプトから


地球だより

 アラブ・イスラム世界は、「アラブの春」を通じて長期独裁政権を打倒後、民主主義に向かい得ると考えた欧米世界の見方が、いかに甘かったかが、昨今の、エジプトやチュニジア、リビア、シリアなどの現状を見るに及び、証明されつつある。

 民主主義をスムーズに実現するにあたって、同世界が共通して整えられていなかった準備とは、一言で言えば、「国民の意識」で、それを形成する教育の不十分さが最大の要因。エジプトでさえ文盲率が40%超故、選挙用紙には候補者が文字の他、絵で表示される始末だ。何よりもあまりにイスラム教の教えが浸透していることから、信仰的発想はあっても、科学的・批判的発想が無く、歴史の教科書は極端に言えばイスラム史しかないというお粗末さ。本屋も貧弱で、コーラン以外の本を読む習慣もない。電車の中で本を読んでいる人は皆無。ラマダン期間に一生懸命コーランを読んでいる姿とは全く対照的だ。せいぜい新聞を読む人がちらほら。従って、民主主義を成立させる「個」の確立が無く、政教分離原則すら知らない。

 アラブ・イスラム世界が民主化する二つの道があるとすれば、一つは、近代トルコの父ケマル・アタチュルクのような人物によって、強力に政教分離を推し進めるか、第二は、比較的教育水準の高い軍が主導して国民の教育水準を高めた上で、民主主義適用に踏み切るかだ。それ以前に選挙しても、民主主義とは正反対のイスラム独裁に向かうムスリム同胞団などを選ぶ結果しか生まない。イスラム教信仰があまりに強く、人々の心を支配しているからだ。パキスタンの少女マララさんは女性教育を強調するが、それはもちろんながらアラブ世界では男性にも徹底した客観的・科学的教育が必要だ。

(S)