貴いキムチ


韓国紙セゲイルボ・コラム「説往説来」

 キムチは韓国人の飲食文化の象徴だ。強く引かれる味はないが、食べないとなんとなく寂しい食膳上の“大の親友”だ。海外旅行に出ると、自宅と同じくらい懐かしいのがキムチだ。

 「いちいち種類を選り分けることもなく/ひとつひとつ名前を言うこともなく/一生食べても飽きない/キムチ、キムチ、この飯泥棒様!」(オ・ジョンバンの詩『キムチ』より)

 キムチに関する最初の記録は中国の史書、三国志『魏志東夷伝』に出てくる。「高句麗人は野菜を食べ、塩を利用し、塩辛をつくるのがうまい」と記されている。キムチの発展段階を見ると、時代別に特徴が見られる。三国時代にカブ、ニラなどを塩漬けしたチャンガチ型のキムチが最初に姿を現した。高麗時代にはトンチミ(大根の薄い塩水漬け)、ナバクキムチ(四角に薄く切り刻んだ大根を主材料とした汁の多いキムチ)が開発され、ネギ、ニンニクが加味されたヤンニョム(薬味)型キムチも現れた。朝鮮時代中期の壬辰倭乱(文禄・慶長の役)を前後して唐辛子が持ち込まれ、白菜の栽培が本格化して今と同じような形と味のキムチが誕生した。

 キムチの効能は科学的に立証されている。何よりも乳酸菌とビタミン、繊維素が豊富だ。正真正銘の健康食品だ。糖尿病、心臓疾患、肥満などの成人病と大腸がん、胃がんの予防・治療に効能がある。日本式キムチの浅漬けに比べ乳酸菌が166倍も多いという。

 キムチは52カ国に輸出されている。世界の人々から愛される国際的な食品として浮上した。キムチの卓越した効能と“韓流”ブームの影響が大きい。「韓国人は唐辛子とニンニクを食べて頭が悪い」といってキムチを嫌っていた日本人も今やキムチマニアとなった。隔世の感を禁じ得ない。

 中国でも2003年にSARSが流行した時、「韓国人がSARSにかからないのはキムチをよく食べるため」だというマスコミ報道が出て、キムチブームが吹き荒れた。ミシェル・オバマ米大統領夫人は直接漬けたキムチの写真をレシピと一緒にブログで紹介して話題になった。

 米国の健康専門誌『ヘルス』は2006年、キムチを世界の5大健康食品に選定した。キムチが今度、また事を起こすようだ。ユネスコの無形文化遺産として登録されることが確実となった。本当に偉大で大したキムチだ。国家的な慶事と言わざるを得ない。キムチの躍進によって韓国食の世界化がもっと活性化してほしいものだ。

(韓国紙「セゲイルボ」10月25日付) 

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