F35と日本の技術力


 米国政府はアジア太平洋地域での最新鋭ステルス戦闘機F35の整備拠点として、日本とオーストラリアを選定した。航空自衛隊が導入する42機や在日米軍の所属機が整備の対象となる。

 F35とはどのような戦闘機なのか。簡単に説明すると以下の通りだ。

 これまでの戦闘機とは次元の異なる高度な電子機器を搭載し、革新的な戦闘能力を持っている。高度化レーダー、いくつもの赤外線センサー、2つのデータリンクによって集められる戦闘データが搭載するミッション・コンピューターで統合され、コックピット前面の大型ディスプレイと、パイロットの装着するヘルメットに投影される。パイロットは無駄な動きなしに機体を操り、的確に攻撃に専念できるシステムを備えている。

 今年は、戦闘機が誕生して100年を迎える。戦闘機は1914年8月に勃発した第1次世界大戦で初めて登場した軍用機の一種であり、当初の軍用機は偵察が主な任務であった。同年末になると、敵機を撃墜するために機関銃を固定した軍用機が登場する。これが現在の戦闘機の原形だ。

 しかし、このときの機体は木製、翼は布張り、プロペラで推進する複葉機であった。第2次世界大戦では、機体のすべてが金属製となり、日本でも「零戦」「隼」「飛燕」「紫電改」などの名機が次々と誕生した。

 戦後、GHQ指令によって、日本は航空機の生産・研究の一切を禁止され、航空機産業は解体されたが、戦闘機づくりの魂は戦後も脈々と生き続けてきた。その代表格がF35の整備を担当することになる三菱重工やIHI(旧・石川島播磨重工)などの企業だ。また、F35には、日本企業の素材や部品が大量に使用されている。

 日本政府も、今回の決定を「わが国のF35の運用支援体制の確保や、国内防衛産業基盤の維持、日米同盟の強化を考えたときに意義深いものだ」として歓迎している。

 日本企業の技術力と品質の高さが、日米同盟の強化にも貢献しているのである。

(濱口和久)