それでもマック大好き


地球だより

 ソ連崩壊からまもなく、筆者が初めてモスクワを訪れた時、ビックマックを食べるためにマクドナルドの一号店の長い長い列に並んだ。マイナス10度の寒さの中、2時間も待ってやっと入店できるのである。

 人々は西側の品に飢えていた。特にファストフード文化は初体験。「マクドナルド」に続き、フライドチキン店や「クローシュカ・カルトーシュカ」というロシア風ベークドポテトの店が追随。今やファストフード文化はロシアの人々の生活の一部となっている。

 そのファストフード文化の象徴マクドナルドが、ウクライナ危機のあおりを受けている。歴史的な一号店を含む3店舗が閉鎖されたニュースは国内外で大きく取り上げられた。営業停止期間は90日間。ロシアの他の町の幾つかのマクドナルドにも閉鎖命令が出された。

 ただ、「衛生上の理由」を信じるロシア人はいない。誰もが欧米の対ロシア制裁に対する報復と思っている。だからみんな安心(?)して、営業している他のマクドナルドで食事をする。昼食時や週末は以前と変わらず人々でごったがえしている。

 ウクライナ問題、対露制裁でロシアでは反欧米感情が高まり、強硬姿勢を取るプーチン大統領の人気は高い。しかし、ロシアのマクドナルド全店舗が閉鎖されるような事態になれば、国民の不満は欧米ではなくプーチン政権に向けられるだろう。

 プーチン政権もそれが分かっているから、目立つ数店舗に営業停止命令を出すことで、欧米向けのパフォーマンスを行ったのだろう。

(N)