人口減少の衝撃


 全国知事会が、最近少子高齢化を背景とする人口減少問題を集中討議して「少子化非常事態宣言」を採択した。討議の基礎資料となったのが、民間の研究機関「日本創成会議」の人口減少問題検討分科会が今年5月に公表した全国の市町村別の2010年を基準とした40年時点の人口推計だ。その結果、40年に若年女性(20~39歳)が半分以下に減る自治体が全体の約5割896自治体に上るという。

 日本の人口推計では、これまでも60年には9000万人を割り込むとか、2100年には5000万人弱まで減少するというものがあったが、まだ危機感を身近に感じるには至らなかった。ところが先の推計は市町村別なので、そのインパクトは絶大だ。例えば筆者の故郷である四国の田舎町は、平成の大合併で人口がやっと1万500人程度(10年)になったが40年には4500人を割り込み、若年女性は3割弱の200人余りになる(人口移動が収束しない場合)という。26年後に東京の八王子市よりも広い町に若年女性が200人余りしかいなくなると言われて驚かない人はいないだろう。

 知事会の宣言にあるように「今こそ思い切った政策を展開し、国・地方を通じたトータルプランに総力を挙げて取り組むべき時」なのだろうが、政府は既に1995年から本格的な少子化対策に乗り出し、03年以降は担当相までいるが十分な効果を上げていない。昨年、配布が見送られた「女性手帳」でも明らかなように、「女性の自己決定権に国が干渉すべきでない」という考え方も根強いし、地方振興の問題もかかわるので一筋縄ではいかない。

 そんな時は原点に戻って考えるべきだろう。妊娠・出産・育児・教育は、男性と女性の共同作業であり、それを通して男性と女性は父親となり母親となる。それがそれぞれの人生においてどんな意味と価値を持つのか、と。(武)