「祈り」で中東和平は実現できるか


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フランシスコ法王、イスラエルの聖誕教会前広場でミサを行う(オーストリア国営放送中継から、2014年5月25日)

 ローマ法王フランシスコは中東巡礼の際、パレスチナ自治政府代表のアッバス議長とイスラエルのペレス大統領をローマに招き、和平実現のために共に祈りたいと申し出た。両者はフランシスコ法王の願いを受け入れ、3者の祈りの会が実現する運びとなった。
 
 バチカン法王庁が29日、明らかにしたところによると、ローマ法王、アッバス議長、ペレス大統領の3者の祈りの会は6月8日の聖霊降臨祭(ペンテコステ)の日、フランシスコ法王が宿泊しているバチカンのゲストハウス、サンタ・マルタで行われることになったという。

 フランシスコ法王は「バチカンはパレスチナとイスラエル間の和平交渉を調停する考えはない。和平実現のために共に祈りを捧げたいだけだ」と説明している。すなわち、3者の祈祷会は政治的な会合ではなく、純粋な「祈り」の時というのだ。

 ところで、フランシスコ法王と共に祈るためわざわざイスラエルとパレスチナからバチカンを訪問する意義があるだろうか、という素朴な疑問が出てくる。ペレス大統領もアッバス議長もフランシスコ法王の祈りへの呼び掛けに応じたということは、彼らは「祈り」がひょっとしたら他の外交交渉に多くの時間を費やすよりパワフルかもしれない、と感じているのかもしれない。

 ユダヤ教徒のペレス大統領、敬虔なイスラム教徒のアッバス議長も神の存在については疑問の余地がない。神の力を学び、知っている政治家だ。

 キリスト教代表のフランシスコ法王、イスラム教代表のアッバス議長、そしてユダヤ教の代表、ぺレス大統領と、アブラハムから派生した3大一神教の代表が結集して中東の和平実現のために祈りを捧げるということはこれまでなかった出来事だ。

 そこで「祈り」について少し考えてみよう。イエスは「真心の祈りは山をも動かす」という。祈りで不治の病が治癒されたケースも聖書には記述されている。タルムードでもコーランにも表現は異なるが、神への真摯な祈りが如何にパワフルかが記されている。

 最近では、ソチ冬季五輪大会開催を阻止しようとするイスラム過激勢力が神に「ソチ周辺で地震を起こしてほしい」と祈った、というニュースが報じられた。幸い、神はテロリストたちの祈りを聞かれず、ソチ冬季五輪大会は無事、幕を閉じた。

 フランシスコ法王はバチカンのゲストハウスでアッバス議長、ぺレス大統領と共にパレスチナの和平実現のために祈りを捧げることができれば、中東問題も解決に向かって動き出すのではないかと、密かに期待しているかもしれない。

 喧騒な世俗社会に生きていると、時だけが慌ただしく過ぎていく。そんな時、神の前に首を垂れ、静かに祈ることは貴重な瞬間かもしれない。

 フランシスコ法王、アッバス議長、ぺレス大統領には、「祈りが中東の和平を導いた」という良き証を立ててほしいものだ。

(ウィーン在住)