袋叩きの鄭洪原首相


韓国紙セゲイルボ・コラム「説往説来」

 鄭洪原(チョンホンウォン)首相の受難の日が続き、袋叩(だた)きの身を免れないでいる。先月27日、セウォル号沈没事故の責任を取って辞意を表明した後、29日に珍島(チンド)を訪れて孤軍奮闘。昨日、行方不明者の家族との会議のため珍島体育館を訪問した。家族の一人ひとりとあいさつする中で、ある家族が「収容された子供たちの遺体がどんな姿なのか、必ず確認してから行って」と要求。これに対し「日程の都合で午後にソウルに帰らなければならないので…」とためらうと、家族たちが抗議したため、「そうする」と答えた後にやっとその場を離れることができた。

 一昨日の午後に会議を主宰したが、珍島郡庁の汎政府事故対策本部で非公開で行われた「セウォル号救助・捜索関連民官軍海外専門家会議」だった。あるマスコミが同会議について「ポンスンア学堂(KBS2の長寿お笑い番組の旧コーナー。小学校の教室での先生と児童の的外れな問答が人気を呼んだ)のようだ」と報じた。これに対し首相室は即刻「事実と異なる」との釈明資料を出した。海洋水産部(部は省に相当)、海洋警察庁、海軍、救助捜索チームなどの政府責任者と民間の専門家、海外の救難専門家など約20人が参加した会議で、具体的な救助方法が論じられたという。

 鄭首相は先月29日、大統領主宰の国務会議(閣議)にも参加せずに珍島を訪ねた。辞任する瞬間まで事故現場に留(とど)まって事故収拾の任を全うしようというのだろうが、逆効果になっている。時限付の首相として命令が通らない。力のない首相が前面に立っても押しが利かない。信頼はおろか政府への不信ばかりを煽(あお)る形だ。鄭首相本人も罪作りだ。心は既に離れているのに体だけ無理に残った。もう辞めさせてあげるべきだ。鄭首相がいないと事故が収拾できないこともない。

 鄭首相の辞意表明と朴槿恵大統領の受理保留は不可避な側面がなくはないが、批判は絶えない。政府が責任を取る姿勢を示そうとしたが、かえって局面転換を狙った辞意表明だという逆風を呼んだ。米紙ニューヨーク・タイムズは「韓国の首相は概して儀典上の職責で、大型スキャンダルや政策の失敗で大衆の憤怒を鎮静化させる必要がある時は解任される」と紹介した。スケープゴートが首相の宿命だ。

 「責任首相制」うんぬんは公約集に入っているだけの装飾品にすぎない。鄭首相が儀典首相・代読首相・防弾首相の悲哀を全身で見せている。

(5月2日付)

※記事は本紙の編集方針とは別であり、韓国の論調として紹介するものです。