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血筋を気にしないフランス文化


地球だより

 フランスでは今年3月の統一地方選挙で大敗した与党・左派政権が大規模な内閣改造を行い、マニュエル・バルス前仏内相が首相に指名された。バルス氏はスペインのカタルーニャ人の父とイタリア系スイス人の母との間に生まれた人物だ。

 バルス氏がフランス国籍を取得したのは20歳の時で、言ってみればフランス人の血は一滴も流れていない。実はサルコジ前仏大統領もユダヤ人の母を持つハンガリー系移民の子だった。フランスの大統領にフランス人の血が一滴も流れていないケースだ。

 この件についてフランス人はどう思っているのだろうか。現在、不動産開発会社で課長を務める友人のミカエルは「フランス人は、そんなことを気にしたことはない。その人物が国のためにいいことをしてくれればそれでいい」と言う。

 一方、友人で建築家のクサビエは「もし、その政治家が悪いことを引き起こしたら、出身が問題視されることもあり得る。例えば、アラブ系議員がアラブ人の富豪と結託して悪い事をすれば、その血筋が非難されるだろうね」と言うのだ。

 しかし、それ以上に重要なことは、フランス人のみならず、ヨーロッパ人は長い歴史の中で移動を繰り返し、国をまたいで結婚もしているので、血を気にする文化ではないことだ。強いて言えば、ヨーロッパ系か非ヨーロッパ系かという区分けがあるくらいだ。

無論、ユダヤ人が非ユダヤ人と結婚するのは困難が伴うなどの例はあるが、多くのヨーロッパ人は苗字で、背景を想像している。スラブ系の苗字を持つフランス人、イタリア系、スペイン系、ドイツ系など、苗字は出身地を想像させるが、結果的にフランスの価値観を受け入れていればフランス人というのが一般的な考えだ。

 そんなフランスだが歴史を積み重ねてきた価値観はしっかり存在する。例えば70年安保世代でフランスの左翼思想に憧れてフランスに移り住んだ日本人は多い。彼らは昨年、同性婚の合法化に反対する運動が強烈だったことや、最近の極右への支持に戸惑いを感じている。

 フランスの根底にある価値観を理解できずフランス人になり切れない人種だ。

(M)