少子高齢化と大学


 都内にある仏教系大学に通う義父に誘われて、4月から仏教講義に通い始めた。今年は学校側の見込みの倍以上受講があり、講義室はほぼ満席。最近の仏教人気は確かのようだ。

 ここでは学生や僧侶志望の若者、社会人が同じ教室で学ぶユニークなスタイルを取っている。担当教官の説明によると、その狙いは授業の活性化にある。

 2回目の授業の日、90分講義が半ばに差し掛かった頃、その意味が理解できた。最前列では白髪交じりの社会人が熱心にノートを取る。教室の後方を見ると、うつ伏せ状態の学生が散見された。

 義父は85歳、社会人では最高齢者。こんな年代の人が横にいたら、学生は姿勢を正される。教官の話によると、いい意味で緊張感が生まれ、授業が引き締まるのだという。社会人学生の方も、元気をもらうにちがいない。

 義父は今年7年目、これで最後と言いながら、最高齢の記録を更新し続けている。学生と高齢者の共学は、意外な相乗効果を生んでいる。

 18歳人口が減少するなか、大学は社会人を取り込む、さまざまな講座を設けている。週末の公開講座、平日の夜は現役のビジネスマン向けの講座を開設しており、大学のキャンパスは若者が独占する場ではなくなりつつある。某女子大が今年から子育てで離職した主婦のスキルアップと就職支援の1年コースをスタートさせたというニュースを耳にした。

 日本はいずれ労働力人口の不足に直面することになる。社会人学生の比率はまだ2%程度だが、高学歴の主婦層や正規コースを外れてしまった若者など、あらゆる年代層の学び直しの教育機関としても、大学が担う役割は大きい。

 少子高齢化が進むなか、かつて「象牙の塔」と言われた大学のキャンパスは、老若男女が集う学びの場に変わりつつある。(光)