後悔しない選択


 少子高齢化によって日本人の人口が3年連続して過去最大の減少となった、と総務省が発表した。このニュースに接して、中学校時代の同級生(独身女性)の放った言葉を思い出した。

 「私、失敗したと思うことが一つあるの。子供を生まなかったことよ。夫はいらないけど、子供はいないとね。だって、私のお墓、だれが守ってくれるのよ」

 かなり酒が入っていたからこそ出た本音だろう。全国に名の知られた一流企業に就職してキャリアを積み重ねてきた。若い時は仕事に生き甲斐(がい)を感じ、独りで暮らしてもそれほど寂しさを感じることはなかった。だが、中年を過ぎると、死後のことまで考え出す。そこで初めて、家族を持たないことの現実が若い時とはまったく違った意味合いをもって迫ってきたのだ、と思う。

 わが国の少子化の大きな要因は晩婚化と非婚化だ。日本人4人に1人が65歳以上になった。その一方で、50歳までに一度も結婚しない人の割合(生涯未婚率)は右肩上がりに上がっている。2010年には男性5人に1人、女性10人に1人だったが、あと25年もすると、男性35%、女性27%になるのだという。

 毎日新聞19日付にノンフィクション作家の亀山早苗さんが「結婚しない、子供持たないのも人生」と書いていた。結婚や出産は、本人がその気にならなければどうしようもない。生涯独身で通すのも人生である。しかし、子供の数が減れば、日本の人口が減って、現役世代の負担は重くなり、社会が成り立たなくなるという事実からも目を背けることはできない。

 生涯独身であることを積極的に選択する人は少ないはずだ。人それぞれの人生があるとは言え、結婚・出産で、若者たちが後悔しない選択をするためには、教育の果たす役割が大きい。個人の幸せと社会の発展は無関係でないことも忘れないでほしい。(清)