フィリピンで相次ぐ交通機関の事故


地球だより

 このところ、フィリピンでは交通機関の事故が相次ぎ、杜撰(ずさん)な安全対策が浮き彫りとなっている。

 この国でバスの事故は日常茶飯事だが、先日もマニラ首都圏近郊の高速道路で、走行中にタイヤが外れたバスが横転し、乗客40人以上が負傷する事故があった。つい先月もルソン島の山岳地帯でブレーキが故障したバスが崖から転落し、外国人観光客を含む17人が死亡したばかり。庶民の足として欠かせないバスだが、整備不良のほか、過酷な労働条件から薬物に手を出す運転手も後を絶たず、事故の原因となっている。

 一方、比較的安全な高架鉄道も、最近は思わぬトラブルが相次いだ。運行システムの問題で一部区間が利用不能になったのに続き、運転手のミスで緊急ブレーキが作動し、車内で乗客が転倒するなどして10人が負傷する事故が起きた。

 主要道路の渋滞悪化に伴い、そのしわ寄せとして高架鉄道の利用者が急増しているが、通勤時間には駅周辺から長蛇の列ができる始末。営業時間の拡大や列車の増発を求める声も高まっているが、最近のトラブルを見る限り整備すら追い付いていないようだ。

 こうした貧弱な公共の交通機関からマイカーに憧れる庶民は多く、好調な経済の後押しもあり新車販売台数は、今年1月の段階で前年の約27%増となっている。

 これからマニラ首都圏の渋滞は悪化の一途をたどるのは確実だが、今のところ決定的な対策はなさそうだ。自転車の利用も呼び掛けられているが、この暑い国では普及しそうにない。まさに八方ふさがりの状態だ。

(F)