朴大統領の食膳論


韓国紙セゲイルボ

 王の食膳には12種類のおかずが載る。ご飯と汁、醤油(しょうゆ)を除いた数だ。陰陽五行説によると陽は伸びて突出する性質があり1、3、5、7、9が陽数だ。王の健康のためにおかずの数はこの数に合わせる。9が最上だが、王は天が下したので3を加えて12種類のおかずになる。

 『英祖(ヨンジョ)(朝鮮第21代王)実録』には「王の食事は1日に5回」とある。歴史学者たちによると、王の通常の食膳である水刺床(スラサン)は2回で残りは間食だという。映画『王になった男』で小豆粥(がゆ)を食べる場面がよく出るのはそのためだ。王がごちそうばかり食べていたのではない。民の痛みを思っておかずの数を減らしたり(減膳)、肉のおかずをなくしたり(徹膳)した。近ごろ、韓国料理店に行くとおかずの数が12種類をはるかに超えて食膳の脚が曲がるほどだ。王の食膳をまねたのだろうが、質でなく量で勝負するようで歓迎できない。とはいえ、選んで食べるのは本当に面白い。

 1960、70年代を経験した人々は誰もが食膳の思い出を持っている。その頃、オンドル部屋と台所は分離されており、オモニ(母親)たちは苦労して台所から食事を載せた食膳を部屋に運んだ。しかも、オモニが準備した食膳はアボジ(父親)と息子が食べて、オモニは大概、床に直置きした1、 2種類のおかずでご飯を食べていた。男たちは当時、スプーンを動かすだけでよかった。その大変な時期を経験した人たちは、どこかで昔風の食膳に出合うと、オモニのことを思って目頭が熱くなる。

 数年前、映画賞を受賞した俳優の黄正民(ファンジョンミン)のコメントに涙がこみ上げるほどの感動を受けた。「私にもこんないい賞が来るんですね。人々につまらない俳優の端くれだと自己紹介します。60人余りのスタッフが準備してくれた食膳で、私はただおいしく食べさえすればいいためです。私だけスポットライトを浴びて申し訳ありません」

 朴槿恵大統領の食膳論に、いまさらながら関心が向かう。西洋では食事を食べる時、スープ、メーン料理、デザートなどが段階的に出てくるが、韓国は食膳にご飯、汁、おかず、鍋物などを全部載せて食べる。東洋と西洋の食文化が違うように、北朝鮮の核問題を論議する方式も韓国式にしようというのだ。 ちょうど久しぶりに南北次官級接触が実現した。南北が向かい合って食べる食膳には、南北関係全般がすべて載せられるはずだ。北朝鮮はオモニの精誠を考えながら今度の食膳を受けなければならないのだが…。

(2月13日付)