日中の衝突煽る英メディア


地球だより

 安倍首相はスイスで開かれた世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で初の基調講演を行ったが、海外メディアとの懇談会の場で誘導質問に引っ掛かった。

 「日中関係が軍事衝突(戦争)に発展する可能性はないか」と質問されて、「今年は第1次大戦から100年を迎える年。当時、英独は大きな経済関係にあったにもかかわらず、第1次大戦に至った歴史的経緯があった」などと説明したが、これが現在の日中関係を第1次大戦前の英独に例えたと受け取られて問題視されている。

 だが、現在の日中関係を第1次大戦前の英独関係に例えて煽っている張本人は英メディアだ。懇談会の司会役を務めたフィナンシャル・タイムズ(FT)紙のギデオン・ラクマン氏は既に約1年前の昨年2月5日付FT紙で、「太平洋に影を落とす1914年の記憶」という見出し付きの論説記事で「中国は今、100年前のドイツのように、既存の大国が自国の台頭を断固阻止することを恐れる新興大国だ」と述べ、日中衝突の危険性を警告した。

 また、FT紙は同年12月4日付で、マーチン・ウルフ論説委員が「中国はカイゼル(当時のドイツ皇帝)の失敗を繰り返すな」というコラム記事を書いて、日中関係を第1次大戦前の英独関係に例えた。

 こうした報道によって「日中の軍事衝突(戦争)」というテーマが独り歩きし始め、東アジアの当事者たちに対しても悪影響を与えている。年末年始にかけてはデーリー・テレグラフ紙が日中両国の駐英大使の相互批判記事を掲げ、その直後BBCテレビが両大使にインタビューするなど、英メディアは読者が興味を引く「歴史の教訓」を持ち出しながら、日中の紛争を煽っているようなところがある。

(G)