バチカン聖職者の性犯罪問題審査


地球だより

 ジュネーブの「国連子供の権利条約」(UNCRC)委員会は16日、バチカン(ローマ法王庁)関係者を招き、聖職者による未成年者への性的虐待問題を審査した。審査は全加盟国に義務付けられている定期審査だが、バチカンは初めて。

 18人から構成された同委員会関係者からは、「バチカンは聖職者の性犯罪を隠蔽している」「司法関係者の捜査を妨害している」といった厳しい批判の声が上がった。それに対し、バチカン代表は「われわれは聖職者の性犯罪事件から学んできた。防止対策を取っている」と説明した。

 UNCRCは1989年、第44回国連総会で採択され、90年2月発効した。18歳未満の子供を対象としたもので、子供の生きる権利、意思表明の権利、親と同居し、保護を受ける権利など54条から構成されている。同条約には「子供の売買、買春、ポルノ」と「武装紛争地での子供の関与」に関する二つの選択議定書がある。締結国は昨年10月段階で193カ国。バチカンは90年に加盟した。

 バチカンは昨年12月上旬、UNCRCの質問に返答書を提出済みだ。聖職者の未成年者への性的虐待問題の対策として、聖職者選出の審査厳格化、適応性のチェックなどを明らかにし、理解を求めている。

 前法王べネディクト16世時代、ドイツ、ベルギー、アイルランド、オーストリア、オランダ、スイス、オーストラリア、米国など欧米の教会で聖職者の未成年者への性的虐待が次々と発覚し、教会の信頼は地に落ちてしまった。米カトリック教会では過去50年間で約5000人の聖職者による性犯罪事件が発覚している。

 フランシスコ法王が昨年選出した8人の枢機卿で構成されたバチカン改革審査会は、聖職者の性犯罪を防止するため聖職者、神学生、宗教者への教育強化と児童保護を推進する独立委員会を設置する意向という。

(S)