スバル検査不正、安全をないがしろにするな


 SUBARU(スバル)が昨年秋以降に発覚した一連の検査不正問題に関連し、新たに約10万台のリコール(回収・無償修理)を国土交通省に届け出た。

 9月に検査不正についての報告書を国交省に提出したが、その後の10月まで不正が続いていたためだ。危機意識が欠如しているとしか言いようがない。

昨年から4回のリコール

 リコールの対象は1~10月に製造した「インプレッサ」など9車種。スバルは検査不正が行われた期間は2017年末までと説明していたが、報告書提出後の国交省の立ち入り検査を機に確認したところ、今年9~10月までブレーキ性能検査などで不正が続いていたとの検査員の証言が出てきた。

 さらに、バンパー部品を装着していないのに完成検査を実施するといった2項目の不適切行為についても、リコール対象に含めることにした。スバルが検査不正でリコールするのは昨年から4回目で、累計約53万台に達する。信頼の失墜は避けられまい。

 昨年9月に日産自動車で資格を持たない者が検査を行っていたことが発覚し、国交省の指示で各自動車メーカーが同様の事案がないか調べたところスバルでも判明。外部の弁護士らの調査で、排ガス・燃費の測定データ改竄(かいざん)やブレーキなどの検査不正も明らかにになった。

 それにしても、度重なる不正発覚で今年6月に社長が交代した後も、不正が10月まで続いていたというのは耳を疑う。しかも、この事実が国交省の検査の過程で分かったものだということは、スバルの抱える問題が極めて深刻であることを物語っている。

 報告書は不正が繰り返される背景に、検査員の法令順守意識の低さや、現場と経営陣との意識の隔たりがあると指摘している。自動車メーカー以外でも、神戸製鋼所や三菱マテリアル、東レなどの素材メーカーで製品の品質データ改竄が明るみに出ているが、こうした企業に共通する課題を示したものだと言えよう。

 スバルは米国販売を急拡大させることで成長し、世界販売は18年3月期までの5年で1・5倍に拡大した。もうけを優先して安全をないがしろにしていたのであれば看過できない。中村知美社長は「急成長に伴うひずみや気の緩みがあった」と述べているが、今度こそ再発を防止すべきだ。

 スバルは19年3月期の生産計画を見直し、品質管理の徹底に向けて国内唯一の完成車工場である群馬製作所(群馬県太田市)や米国工場で2万台強減産する。19年3月期連結業績予想は、売上高を3兆2100億円(従来3兆2500億円)、純利益を1670億円(同2200億円)にそれぞれ下方修正した。これを機に、組織改革や安全意識の向上などを図らなければならない。

日本の製造業は襟を正せ

 企業の不正は、日本の「ものづくり」への信頼を大きく揺るがしかねない。

 不正の有無を問わず、日本の製造業は襟を正して品質向上やコンプライアンス(法令順守)の徹底に努める必要がある。