北米FTA見直し、米の保護主義政策拡大を懸念


 米国とカナダは北米自由貿易協定(NAFTA)の見直しで大筋合意した。8月末に米国と合意に達したメキシコと併せ、3カ国協定の枠組みを維持した上で再交渉が妥結した。

 新協定の名称は「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」とし、11月末の署名を目指す。北米に生産拠点を持つ日本の自動車メーカーもサプライチェーン(部品供給網)の見直しなど、新協定への対応を迫られる。

 自動車の数量制限で合意

 トランプ米大統領は、NAFTAのせいで米国は貿易赤字が増え、製造業の仕事が外国に奪われたとして「史上最悪の貿易協定」と批判。NAFTA見直しは国内の雇用回復を訴えるトランプ氏の看板政策の一つとなった。17年8月から交渉を重ねてきたが、カナダ、メキシコ両国の不満が噴出し、交渉は困難を極めた。

 新協定ではカナダとメキシコが、非課税もしくは低関税率が適用される自動車の対米輸出枠を260万台に設定することを受け入れた。これを上回った場合、米国は高関税をかけることができる。

 また、域内で製造された部品をどの程度使えば関税ゼロの対象になるかを決める「原産地規則」を厳格化し、現在の62・5%以上から75%以上に引き上げる。部品の40~45%は時給16㌦(約1800円)以上の地域でつくるよう求める「賃金条項」も導入する。

 今回の再交渉で、トランプ氏は自動車に25%の関税を課すことをちらつかせ、貿易赤字の削減に向けて米国内の生産や雇用を増やすルール変更をカナダとメキシコに迫った。日本との物品貿易協定(TAG)締結に向けた交渉でも、このような手法で圧力をかける姿勢を示唆している。厳しい交渉となることが懸念される。

 日本の自動車メーカーはNAFTAを前提に、米国への輸出拠点としてカナダとメキシコに積極的に投資してきた。両国から米国への日本車輸出は約150万台規模で、米国での日本車販売670万台の2割程度を占めている。

 新協定ではカナダやメキシコから米国に輸出する自動車の関税がゼロになるNAFTAの枠組みは維持されたものの、数量制限設定や関税ゼロの条件厳格化で、日系各社にとって「ドル箱」の北米事業で将来、大幅なコスト増を招く恐れがある。

 日本にとっての懸念材料は自動車以外にもある。カナダが新協定で、乳製品に関して環太平洋連携協定(TPP)の合意水準を超える市場開放を米国に約束したことだ。日本は米国との貿易交渉でTPPの合意水準を超える譲歩には応じない方針だが、米国が圧力を強めることは確実だ。

自由貿易体制揺るがすな

 トランプ氏は「米国第一」を掲げ、保護主義的政策を拡大しているが、各国の反発を招いている。米中間で激化する貿易摩擦は世界経済の成長に対するリスクを高めている。

 世界経済が停滞すれば、米国の経済にも悪影響が及ぶことは避けられまい。トランプ氏は自由貿易体制を揺るがしてはならない。