仮想通貨流出、業界のずさんな体質改めよ


 仮想通貨交換業者のテックビューロ(大阪市)が、システムへの不正アクセスを受け、70億円相当の仮想通貨が外部に流出した。

1時間余りで外部に

 流出したのは、ビットコイン、ビットコインキャッシュ、モナコインの3種類。顧客の入出金に対応するため、インターネットに接続した状態で仮想通貨を保管する「ホットウォレット」と呼ばれる保管場所から流出した。70億円のうち顧客から預かった分は45億円相当に上る。

 これを受け、テックビューロは他の交換業者を傘下に置く情報サービス会社のフィスコと資本提携を検討する基本契約を締結。フィスコ側から月内に50億円の金融支援を受け、顧客への返還原資とする。顧客の損失を防ぐことは当然だが、信頼回復は簡単ではあるまい。

 仮想通貨をめぐっては、1月に大手業者コインチェック(東京)で580億円相当が流出。この時もホットウォレットの仮想通貨が狙われた。同じ失敗が繰り返されたことは、業界のずさんな体質を示すものだと言わざるを得ない。改善が急務だ。

 多額の仮想通貨は1時間余りの短時間に外部に流出したとみられる。高いハッキング技術を持った人物が関与しているもようだ。

 一方、流出したのは今月14日だったが、テックビューロがサーバーの異常を検知したのは17日で、18日に被害を確認した。なぜ、すぐに流出に気付かなかったのか。徹底した検証が求められる。

 盗まれたビットコインは、送金先の追跡をできなくする「ミキシング」という手法で多数のアドレス(口座)に分散されたと考えられている。一度流出してしまえば取り返しがつかなくなることを肝に銘じるべきだ。

 コインチェックでの仮想通貨流出を受け、金融庁は同社に業務改善命令を発動。このほか、登録業者16社と特例で営業を認めるみなし業者16社の計32社への立ち入り検査を実施した。このうち、みなし業者1社について顧客保護の基準を満たしていないとして登録を拒否。みなし業者12社が登録申請を取り下げるなどして撤退し、仮想通貨交換業者は19社に減った。

 テックビューロも2回にわたって業務改善命令を受け、改善計画を提出していたが、流出を防げなかった。金融庁は同社をはじめ仮想通貨交換業者の顧客財産管理に関する一斉調査に着手したが、再発防止のためには監視の在り方などを見直す必要もあろう。

 仮想通貨は近年、送金手数料の安さなどを背景に取引規模が急拡大した。しかし投機目的で売買されることが多く、マネーロンダリング(資金洗浄)などへの悪用も懸念されている。3月にアルゼンチンの首都ブエノスアイレスで開かれた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議でも議題となるなど国際的な課題となっている。

利用者保護を徹底せよ

 問題が相次ぐことで、仮想通貨の価格は低迷している。このままでは業界の縮小は避けられない。業者はセキュリティー対策強化を最優先し、利用者保護を徹底することが求められる。