水産業改革、魅力ある産業へ制度刷新を


 一般社団法人日本経済調査協議会の第2次水産業改革委員会はこのほど、漁業権の廃止など根本的な制度改革を骨子とした中間提言を発表した。5月に水産庁の改革案が自民党水産部会で了承されたが、日経調の提言は、水産業の再生へより踏み込んだものとして注目される。

 海洋法条約の理念明示

 わが国の水産業は衰退の一途をたどっている。養殖を含めた国内漁獲量は、ピークだった1984年の約3分の1、436万㌧(2016年)にまで落ち込んだ。消費面でも、健康志向の中で世界的に増加しているのとは反対に日本では減少している。

 この結果、漁業経営の悪化や漁業経営体の減少にとどまらず、流通や加工生産の縮小を招き、それらがまた漁業地域の衰退に拍車を掛け、悪循環(負のスパイラル)に陥っていると提言は指摘。「このままでは、日本の水産業は世界の潮流と経済社会の変化に対応できず魅力の乏しい産業として衰退する」と「危機意識」を露(あら)わにしている。

 衰退の根本原因として提言が挙げるのは、水産業と魚食を取り巻く環境が激変する中で、その制度・システムの基本が変わっていないこと、すなわち「制度疲労」だ。

 戦後の漁業法制定(1949年)から69年が経過。この間、日本の漁船団が世界中で魚を獲(と)っていた時代から「国連海洋法条約」の発効(94年)による200カイリ時代が到来した。しかし、日本の漁業に関する制度に大きな変化はなく、特に「『海』と『魚』に対する我が国の法体系が、世界各国の制度・システムと乖離するものになっている」という。

 提言ではまず「海洋と水産資源は国民共有の財産である」ことを明示すべきとした。国連海洋法条約でも示された基本理念を明らかにしたことは意義がある。日本では水産資源は先に獲った者のものになる「無主物先占」とされてきた。これが水産物に対する国の管理責任の曖昧さ、漁業者による「早取り競争」の背景となっているからだ。

 具体的提言では「現行の漁業権を廃止し、すべての漁業・養殖業に許可制度を導入せよ」としている。広く門戸を開こうというもので、水産庁の改革案よりドラスティックだ。

 持続的で夢のある水産業のためには、科学的根拠に基づいた資源管理と実効性のある漁獲規制、安定した収益性が必要だ。そのために、譲渡可能個別漁獲割り当て(ITQ)方式の導入を提言している。

 魚の消費減少傾向に歯止めをかける上で「消費者マインドの確立」も重要課題だ。そのため「小中学校における水産資源に関する教育と国民への啓発普及を強化する必要」を挙げているのも注目される。

 また、これまでの水産関連予算が漁港などハード整備を中心に投入されていたことを指摘。それよりは新制度移行のために投入すべきとしている。

 負のスパイラル脱却を

 豊かな海に囲まれた日本の水産業は、負のスパイラルから脱し、魅力ある産業へと再生する素地は十分にある。その成否は古い制度からの新しい制度への刷新に懸かっている。