世界日報 Web版

米の輸入車関税、どの国の利益にもならない


 トランプ米政権が検討する自動車・同部品への輸入制限措置に異論が続出している。

 米商務省は輸入制限について、国内外の企業や外国政府の代表者を招いて意見を聞く公聴会を開いた。証言者の多くが経済に悪影響を及ぼすとして反対意見を表明した。

20%課す意向を示唆

 トランプ大統領は5月、自動車・同部品の輸入が安全保障上の脅威になる可能性について商務省に調査するよう命じた。脅威に当たると判断すれば輸入車などに高関税を課す。トランプ氏は税率20%を示唆している。

 トランプ政権は既に、知的財産権を侵害したとして中国から輸入するハイテク製品に25%の追加関税を課す制裁措置を発動している。これに対し、中国も米国産品に報復関税を実施。米国による鉄鋼とアルミニウムの輸入制限には、中国のほか、欧州連合(EU)、カナダなどが相次いで報復するなど「貿易戦争」の様相を呈している。

 高関税は、生活必需品や原材料の値上がりなどで両国の消費者と企業に負担を強いる。国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事は、報復関税の応酬で「世界全体の成長率が0・5%押し下げられる」と述べた。保護主義はどの国の利益にもならない。

 公聴会では、日本政府を代表して出席した相川一俊特命全権公使が「日本からの車や部品の輸入は米国の安全保障の脅威ではなく、将来もそうならない」と強調。むしろ、米国が輸入制限に踏み切れば対米投資が冷え込む可能性があると警告した。

 相川氏は、日本の自動車関連メーカーはトランプ政権が発足した2017年1月以降も対米投資を積極的に行い、米国内で2万8000人の雇用創出に貢献してきたと指摘。輸入を制限すれば「米国内の雇用に深刻な影響を与え得る」と述べた。日本政府は、日本企業の貢献について粘り強く訴え続ける必要がある。

 このほか、メキシコや韓国などの政府や企業も相次いで輸入制限に反対。EUやカナダは報復措置にも言及した。米国の昨年の輸入車台数は国・地域別でメキシコが最も多く、カナダ、日本、EUが続いた。

 米国内からも異論が噴出した。最大の業界団体である米自動車工業会(AAM)は「関税は間違った手法だ」と非難。完成車や部品に関税が上乗せされれば、自動車価格の値上がりで消費者の懐を直撃するためだ。国内外からの反発の声に、トランプ氏は真摯(しんし)に耳を傾ける必要があるのではないか。

自由貿易の大切さ訴えよ

 公聴会を受け、菅義偉官房長官は「いかなる貿易上の措置も世界貿易機関(WTO)協定と整合的であるべきだとの立場を米側に訴える」と述べた。中国への制裁に関しては、米企業への技術移転の強要問題もあるため、米国の立場も理解できるが、それでも一方的な制裁発動は世界経済の混乱を招くだけだ。

 米国には自由貿易を通じて世界経済の成長を主導することが求められる。日本政府は7月下旬にも開催する米国との新貿易協議(FFR)などで、自由貿易の大切さを訴えるべきだ。