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水産改革案、成長産業へ脱皮の契機に


 養殖業への民間企業の参入促進を柱とした水産庁の水産改革案がまとまり、自民党の水産部会で了承された。漁獲量の減少、高齢化による働き手不足など課題を抱える水産業を成長産業に脱皮させるきっかけとなるか、注目したい。

漁協の既得権にメス

 改革の柱は、規制緩和による養殖業の活性化。クロマグロやサケ・マス、タイなどの養殖は、漁業協同組合が独占的に行ってきた。養殖をする上で必要な「特定区画漁業権」を漁協に優先的に与えるよう漁業法で定められているからである。改革案では、漁業法を改正し、有効活用されていない漁場がある場合、都道府県知事の判断で民間企業にも漁業権を与える。

 養殖を含めた2016年の国内漁獲量は436万㌧で、ピークだった1984年の約3分の1に減少している。このうち養殖は2割強を占め、水産資源が減少する中、重要性を増している。世界的に見ても、養殖生産量は中国を筆頭に大きく増加しているが、わが国ではほぼ横ばい状態が続いている。

 他の国々の養殖業は、日本に比べて大規模なものが多い。養殖業を活性化させるためには、資金力があり、さらに販路の開拓を担える民間企業の参入が必要だ。規模の拡大と生産性の向上でビジネスとして安定し、夢と魅力のある産業となれば、若い働き手の就労も期待できる。

 改革案が成立すれば、有望な漁場がありながら漁業権が壁となって養殖ができないという矛盾は解決される。また、有効活用されていない漁場では漁業権の取り消しも行える。戦後、連合国軍総司令部(GHQ)主導の「漁業の民主化」によって力を持つようになった漁協の既得権にメスを入れるという点で画期的なものだと言える。

 改革案には水産資源の減少に歯止めを掛けるため、資源管理をより実効性のあるものにする方策も盛り込まれた。現在、サンマやスルメイカなど8種の魚介類に限っている漁獲可能量(TAC)制度の対象を10種以上にし、漁獲量全体の8割とすることを目指す。

 また、TAC対象魚の漁獲量については、これまで国や都道府県で管理してきたものを漁船ごとに行う形とする。割り当てられた漁獲量をオーバーした場合は罰則を設けるとしている。

これまでは、それぞれの漁船が一斉に漁獲競争に走り、資源管理や経営の面で問題が多かった。しかし漁船ごとに漁獲可能量を決める、いわゆる個別割り当て(IQ)を導入すれば、実効性ははるかに上がるだろう。

 一方、休業や減船の対象になった漁業者には、公的支援を検討するという。長年漁業を支えてきた人たちへの手当は必要だろう。ただそれが、補助金のばらまきに終わってはならない。規制緩和によって競争原理を導入し、漁業を活性化させようという本来の目的からずれてしまわないようにしてほしい。

他国に後れを取るな

 漁業大国を自認してきたわが国だが、いつの間にかノルウェーその他の漁業先進国に後れを取るようになっている。実効性ある改革を断行し、わが国水産業の再生のきっかけとしたい。