一時の苦境を脱し、業績回復に道筋を付けつつ…


 一時の苦境を脱し、業績回復に道筋を付けつつある電機メーカー大手のソニー。先ごろ発表した中期経営計画によると、画像用半導体「CMOSイメージセンサー」を中心に3年間で約1兆円の設備投資を行う。

 この半導体は人工知能など画像処理の世界ですでに利用されているが、乗用車などの自動運転向けとして開発競争が世界的に激化している。現在、自動運転では人間の目以上の能力を持つセンサーを付けないと不安が残るというのが業界の認識だ。

 こうした中、ソニーは同半導体の技術開発で世界のトップランナーを目指そうというわけだ。同社の吉田憲一郎社長は「将来の成長牽引(けんいん)役に育つ可能性があると見込んだ技術開発に重きを置く」と腰を据えている。

 半導体技術は1970年代から80年代にかけて、政府と実業界が協力してその発展方向を見定め、日本の有力産業に押し上げた部門だ。しかしその後、中進国の追い上げで、日本は中心的に取り組むべき技術を見失う時期が続いた。

 かつて世間の話題をさらうヒット商品を次々と世に送り出してきたソニーもその後、米国での資産売却など、むしろ一過性の利益拡大を目指す経営が目立った。しかし企業は目の前のことばかりに必死になっていると、長期的な視点を見失いがちだ。

 わが国では昨今、新規のエレクトロニクスの部門でベンチャー企業が多く活躍する中、ここにきてソニーのような大企業の発奮が心強い。