外国人労働者、総合的な制度設計が必要だ


 景気が上向きにある中、さまざまな分野での人手不足が顕著になってきている。その不足を補うため、安倍晋三首相は外国人労働者の受け入れ拡大を検討する意向で来月にも方向性を示す。この問題は日本経済の持続的な成長、さらに治安や社会問題にも直結する。将来を見据えた総合的な制度設計が必要だ。

 日本の労働人口が大幅減

 2000年から16年までの間にわが国の労働人口は、15~64歳の男性が397万人も減少。その一方で高齢者や15~64歳の女性が増え、減少分の8割近くを補ってきた。しかし少子高齢化が進む中、20年代に入ると高齢者や女性を労働力として補充することにも限界が来るとみられる。不足分は外国人労働者に頼るしかないのが現状である。

 わが国は建前としては、人手不足対策としての外国人労働者受け入れを認めていない。ところが実際には、外国人労働者は17年10月の時点で128万人に上っている。5年前の68万人から60万人増え、日本の雇用者総数の約2%を占める。外国人を雇う事業者の数は19万カ所を超え、前年同期比で12・6%増となっている。

 日本で働く外国人労働者は、大学教授や医師など「専門的・技術分野」の労働者、発展途上国への国際協力を目的とした技能実習生、永住者や日本人の配偶者など「身分に基づく在留」者、さらに留学生などだ。増加が顕著なのは、技能実習生(25万7788人)と留学生(25万9604人)で、共に2割以上増えている。

 技能実習生については、途上国への技能の移転ではなく、安価な労働力の確保を目的とする事業者も少なくない。実習先企業での人権侵害や賃金不払いなどの問題も起きている。

 留学生は本来の学業の妨げにならない範囲で、週28時間のアルバイトが認められている。しかし、アルバイト目的の外国人の受け皿として日本語学校などが利用されている面もある。とはいえ、コンビニエンスストアやファストフード店などの働き手として、外国人留学生は欠かせない存在になっている。外国人労働者をめぐる建前と本音は、使い分けることができないくらいの乖離(かいり)を示している。

 そういう中で不法滞在者が増えているのも問題だ。法務省によると、技能実習生で入国し失踪した外国人は17年上半期だけで3000人を超えている。問題は企業側、実習生側双方にあるとみられるが、いずれにせよ不法滞在者の増加は将来的に、わが国の治安や社会秩序を脅かす原因となりかねない。政府は、こうした面も考慮した総合的な制度設計をすべきだ。

 日本文化学ぶ機会を

 20年までに訪日外国人4000万人という政府目標を達成するには、インバウンドの流れを地方に持ってくることが課題だが、観光業やサービス業での人手不足も深刻だ。外国人を外国人がサービスすることも現実的になってきている。その際、外国人従業員にも日本的な接客「おもてなし」が求められる。

 来日する外国人労働者が、日本の伝統になじみ、日本文化を学んで身に付ける機会を持つことも必要になってくるだろう。