エネルギー戦略、再エネの「自立」に道筋付けよ


 2050年までの長期的なエネルギー戦略を議論する経済産業省の有識者会議は、50年に温室効果ガスを13年比で8割減らすという目標達成に向けた提言を取りまとめた。

 提言は「脱炭素化」へエネルギー転換すると表明。再生可能エネルギーを主力電源とし、原発を「選択肢」と位置付けた。

 主力電源と位置付ける

 地球温暖化対策の国際的な枠組み「パリ協定」が16年に発効し、原油や石炭など化石燃料への依存からの脱却を目指して先進国を中心に再エネ普及の取り組みが加速している。提言が再エネを主力電源と位置付けたのは、こうした動きを踏まえたものだ。

 ただ再エネは天候などで発電量が左右されるため、供給が不安定になりやすい。特に日本の場合、国土が狭く、太陽光パネルや風力発電機の設置に適した土地が限られるため、大量の発電が難しいという事情がある。

 このため発電コストが高く、固定価格買い取り制度で電気料金に上乗せされ、国民負担となっている費用が年3兆円規模に膨らんでいる。「経済的に自立した主力電源化」に道筋を付けるには、蓄電池の性能向上や送電網の増強などが求められよう。

 一方、提言は原発について「可能な限り依存度低減」としつつ、脱炭素社会を実現するための選択肢とした。小型原子炉などの技術開発や人材確保などの必要性に言及したのは妥当だと言える。

 政府は現在、全電源に占める原発比率を30年度に20~22%(16年度推計は2%)に高める目標を掲げている。だが既存炉全てを60年運転させても、新設や建て替えがなければ、50年度ごろに全電源に占める比率は10%程度まで下がる。

 提言は、原発の新設や建て替えの是非には触れていない。だが、原発を活用するのであれば新設は欠かせない。政府は国民の理解を得て電力会社を後押しする必要がある。

 東日本大震災の発生後、原発の停止などで依存度が高まっている火力発電について、提言は石炭の発電効率向上や温室効果ガスの排出量がより少ない天然ガスへの移行を促進する方針を示した。褐炭などから水素を製造し発生した二酸化炭素(CO2)を地中に貯蔵する取り組みや、自動車の電動化・水素化も追求する。火力発電は再エネの補完電源としての役割を担っており、当面は主力電源であり続けるとの立場だ。

 火力発電の活用は「脱炭素化」に逆行するとの意見もあろうが、電力供給が不安定な再エネの弱点を補うには不可欠だと言える。特に石炭は価格が低く、埋蔵されている地域も分散しているため、エネルギー安全保障の観点からも一定程度の活用が求められる。

 原発への不安払拭を

 提言では、原発や再エネ、水素、デジタル化などの技術開発や国家間競争の動向を見極めるため、長期戦略は「全方位での複線シナリオとすべきだ」と指摘した。あらゆるシナリオに対応するには、原発の一層の活用に向けた環境整備も必要だ。政府は原発に対する国民の根強い不安の払拭(ふっしょく)に取り組むべきだ。