リニア談合、決別宣言は形骸化したのか


 リニア中央新幹線工事をめぐる談合事件で、東京地検特捜部は、大手ゼネコン4社が事前に協議して受注予定業者を決めていたとして、独禁法違反(不当な取引制限)容疑で、大成建設の元常務執行役員と鹿島の部長を逮捕した。

 大成と鹿島の幹部逮捕

 2人は2014~15年、大林組と清水建設の担当者らと共謀。東京都内などでJR東海が発注するリニアの品川、名古屋両駅新設工事で受注予定業者を決定したほか、予定通り受注できるような価格の見積もりを行うことで合意し、競争を制限した疑いが持たれている。

 リニア建設は27年に品川(東京)―名古屋間の先行開業を予定する国家的プロジェクト。リニアは強力な超電導磁石の力で車体を軌道から約10㌢浮かせ、最高時速500㌔で走行する次世代の超高速列車だ。

 総工費9兆円のうち3兆円は金利面で優遇される国の財政投融資が充てられる。巨額の資金が投入される事業を談合の標的としたのであれば許されない。談合によって工事価格が高止まりすれば、そのツケはリニアの利用者に回ることになる。

 JR東海などは昨年末までに計24件のリニア工事を業者と契約。品川駅の北工区と南工区は、それぞれ清水建設と大林組の共同企業体(JV)が15年に受注し、名古屋駅中央西工区は16年に大林組のJVに決まった。

 特捜部は昨年12月、公正取引委員会と合同で大手4社を強制捜査。大林組と清水建設は談合を認め、公取委にも課徴金減免制度に基づいて違反を自主申告した。この制度は、最初に談合を申告した企業は課徴金が全額免除されて刑事告発もされず、2番目は50%、3番目も30%減額されるというものだ。企業の「自首」を促す狙いがある。

 特捜部は今回、大林組と清水建設の担当者らの逮捕は見送った。在宅のまま捜査を続けて刑事処分を決めるという。

 逮捕された両容疑者は容疑を否認している。だが、大成建設は談合の裏付けとなる資料を本社から社員寮に移すなど証拠隠しをした疑いも浮上している。特捜部には真相の徹底究明を求めたい。

 今回の談合に関わった4社は「スーパーゼネコン」と呼ばれ、05年12月に談合決別宣言を行ったはずだ。談合を行うなどした独禁法違反企業への課徴金引き上げが盛り込まれた改正法が06年1月に施行されるためだったが、宣言は形骸化していると言わざるを得ない。

 大林組の白石達社長は今回の談合を受けて辞任した。白石氏は07年、当時発覚した談合事件で引責辞任した前社長の後任として就任したが、自身も談合事件によって辞任を余儀なくされる事態となった。ゼネコン業界の談合体質の根深さを物語るものだと言える。

 法令順守を徹底せよ

 リニア建設には、南アルプストンネルや品川駅の新設工事など高い技術が求められる難工事が必要だ。

 大手ゼネコンの力は欠かせないが、決して不正が許されるわけではない。コンプライアンス(法令順守)の徹底に取り組むべきだ。