12月日銀短観、企業に問われる攻めの姿勢


 海外経済の回復を背景に、輸出が引き続き堅調に推移したほか、設備投資も好調で企業心理を押し上げた――景況感が5四半期連続で改善し、11年ぶりの高水準となった大企業製造業の背景である。

 12月の日銀短観が示す企業の景況は、国際情勢など先行きに不透明感はあるものの、2018年度税制改正による減税という追い風も期待できる。経済の好循環形成へ企業の「攻めの姿勢」が問われている。

幅広い業種で景況感改善

 12月日銀短観では、輸出が好調な大企業製造業を中心に幅広い業種で景況感の改善が確認された。大企業非製造業の景況感は横ばいだったものの、訪日外国人(インバウンド)の増加や東京五輪関連の建設需要などを追い風に、非製造業の中堅・中小企業でも業績の回復傾向が見られる。

 17年度の経常利益計画は、大企業製造業で前年度比15・0%増と、前回調査(同4・7%増)から大幅に上方修正。大企業非製造業では前回調査の同1・6%減から同4・9%増へプラスに転じている。

 17年度の大企業製造業の想定為替レートは、1㌦=110円18銭。前回調査(109円29銭)から円安方向に修正された。最近の110円台前半の水準で安定的に推移する為替相場も、プラス要因である。

 さらなる追い風もある。与党の自民、公明両党が決定した18年度税制改正大綱である。

 同大綱は安倍晋三首相が目指す「生産性革命」の実現に向けた法人税減税を盛り込んでいる。3%以上の賃上げと生産性向上につながるIT投資を積極的に行う「攻めの姿勢」を示した企業は、法人税負担を20%まで軽減する。企業が蓄えた手元資金を、革新的な技術や設備への投資などに回すよう促すのが狙いである。

 もちろん、企業を取り巻く経営環境は、追い風ばかりではない。3カ月後の見通しを示すDI(業況が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」の割合を引いた値)は、企業の規模や製造業、非製造業の違いを問わず、3ポイントから6ポイントの悪化を見込む。北朝鮮情勢の緊迫化や、中東情勢の悪化に伴う原油価格の上昇に対する懸念のほか、人手不足の影響である。

 今回の短観でも、雇用人員が「過剰」から「不足」を引いたDIは大企業全産業でマイナス19と25年10カ月ぶりの低水準で、大企業非製造業だけだとマイナス25とさらに深刻な人手不足に陥っている状況を改めて浮き彫りにした。待遇を改善しても、狙い通りに採用できない業種も少なくなく、今後の経営に悪影響を及ぼしかねない状況に至っているのである。

積極的な賃上げや投資を

 人手不足に対して企業は無策ではない。ローソンでは来春、顧客に代金を電子決済してもらうシステムを使い、深夜のレジを無人にする実験を始める。デジタル技術を活用して店舗の生産性を向上させる狙いである。18年度税制改正の法人税減税という援軍を得ることもあり、企業には好循環の形成への自覚を持って賃上げ、設備投資増に積極的に臨んでもらいたい。