原発「ゼロ」からの政策転換は当然だ


 総合資源エネルギー調査会(経済産業相の諮問機関)の基本政策分科会は、安全性が確認された原発の「再稼働を進める」と明記した新エネルギー基本計画案を承認した。政府は来年1月中の閣議決定を目指す。

 民主党政権が目指した「2030年代に原発稼働ゼロ」方針の明確な転換となる。安定的な電力供給のため、原発活用は当然のことだ。

 「重要なベース電源」

 基本計画案では、原発を「エネルギー需給の安定性を支える基盤となる重要なベース電源」と規定している。「ベース電源」とは、安い燃料コストで24時間稼働し続ける電源だ。原発の必要性を強調したのは妥当だと言える。

 現在、全国の計50基の原発が全て止まり、電力会社は火力発電に頼らざるを得ない状況だ。火力発電への依存度が過度に高まると、資源輸出国との価格交渉にも不利に働く。燃料費が膨らみ、福島第1原発事故以前に比べ年間3兆6000億円の負担増となっている。電気料金は値上がりしているが、原発の再稼働が遅れればさらに上昇する恐れもある。家計や企業の負担は大きく、国内産業の空洞化を加速させかねない。早期の原発再稼働が求められている。

 一方、原発依存度について、再生可能エネルギーの導入などを通じて「可能な限り低減させる」姿勢を示した。だが、エネルギーのベストミックス(最適な電源構成)に関しては、原子力規制委員会による原発の安全審査の結果が出ていない現状を踏まえ、数値目標は「先行きが見通せた段階で速やかに示す」と記すにとどめた。

 福島の事故前、総発電量に占める原発の割合は約3割だった。事故を受け、依存度を下げることはやむを得ないだろう。しかし、再生可能エネルギーの中でも、特に太陽光や風力などは天候によって発電量が大きく変動するため、原発を代替するのは難しい面がある。こうしたことを踏まえ、数値目標を設定する必要がある。

 基本計画案では原発の新増設の是非に言及していない。新増設を行わず、40年の寿命を厳格に守るとすれば、50年頃には原発がなくなってしまう。一定割合の原発は維持する方向性を打ち出しているのであれば、新増設は欠かせない。

 また、核燃料サイクル政策についても「引き続き着実に推進する」と継続の方向性を打ち出した。エネルギー安全保障の面でも、継続は適切だ。

 11月にポーランドで開かれた国連気候変動枠組み条約第19回締約国会議(COP19)で、日本は温室効果ガスを05年比3・8%減らすことを表明した。これは京都議定書の基準年である1990年比では3・1%増となり、各国から批判を浴びた。

 温暖化対策にも不可欠

 このような目標を掲げたのは二酸化炭素(CO2)を排出しない原発の再稼働の行方が不透明なためだが、これでは日本の温暖化対策の取り組みが後退したと国際社会に受け止められても仕方がない。日本が温室効果ガス削減で世界をリードするためにも、原発を活用することが不可欠だ。

(12月15日付社説)