日産リコール、安全第一の原点に立ち返れ


 日産自動車の国内全工場で完成検査が資格を持たない者によって行われていた。日産は過去3年間に販売した約121万台について、リコール(回収・無償修理)の実施を国土交通省に届け出る。

 無資格検査が常態化

 無資格検査が行われたのは、9月18日以前に製造された21車種。今月から発売された電気自動車(EV)の新型リーフも含まれる。今後のEV戦略の要が最初からつまずいた痛手は大きいだろう。

 リコール対象の121万台という数は、日産の年間の国内販売台数の2倍以上に上る。リコール費用は250億円以上に達する見通しで、業績への悪影響は避けられない。

 今回の問題について、西川広人社長は「検査は登録された人以外やってはいけないという認識が薄まっていたのではないか」と述べた。だが日産の工場では、社内資格である「完成検査員」の認定を受けていない従業員が検査した場合でも、書類上は有資格者が作業したように見える押印を行っていたとされ、意図的な偽装の可能性も出てきた。無資格検査やこうした偽装が常態化していたとすれば、自動車の安全性への信頼を大きく損なう事態だ。

 日産は燃費データ不正で経営が悪化した三菱自動車を傘下に収め、再発防止を主導していたが、自らがルール違反を犯していたのでは示しが付くまい。何よりも商品のブランドイメージが大きく低下することは避けられないだろう。

 仏ルノー・日産自動車連合に三菱自動車を含む3社は、2017年上半期(1~6月)の世界販売台数が約527万台に達し、独フォルクスワーゲンやトヨタ自動車を抜いて初の世界首位に立った。だが、その背後で安全軽視の体質や規範意識の低下があったとすれば問題だ。

 無資格検査の始まった時期や経緯については、現時点では分からない。日産は弁護士を交えたチームで調査を急ぐ方針だが、原因究明と再発防止を徹底する必要がある。

 自動車業界では、生産の拡大に内部管理が追い付かず、問題が発生するケースが相次いでいる。15年秋には、フォルクスワーゲンでディーゼル車の排ガス不正問題が発覚。グループ会社を含め全世界で約1100万台の大規模リコールに発展した。

 日本勢でも、世界販売を600万台へ引き上げる目標を12年に掲げたホンダが、翌年発売した小型車「フィット」のハイブリッド車でリコールを重ね、最終的に目標を撤回。トヨタも米国で09年~10年に大規模リコールに追い込まれた。

 今回の問題をめぐっては、国交省の要請を受け、他の国内自動車各社も無資格検査に類する行為がないかどうか確認作業を進めている。日産はもちろん同業他社も、安全第一の原点に立ち返るべきだ。

 消費者の信頼を裏切るな

 自動車各社は現在、自動運転車の開発競争にしのぎを削っている。日産も22年末までに発売する計画を発表している。

 その意味でも、消費者の信頼をこれ以上裏切ることがあってはならない。