近海の海洋資源、掘削技術の研究開発加速を


 房総半島から約350㌔離れた海域の海底に、レアメタルを高濃度で含む「コバルトリッチクラスト」(CRC)が広がっているのが確認された。

 調査や採取が比較的容易な近海での確認は初めてだ。商業化に向けた掘削技術の研究開発を加速させたい。

 房総半島沖で存在を確認

 海洋研究開発機構や茨城大、高知大などのチームは、無人探査機「かいこう」で海底にある山(海山)の尾根を調査。山全体がほぼCRCに覆われていると推定した。面積は東京都の半分ほどの約950平方㌔とみられている。採取した中には、最大で13㌢の厚さまで成長したものもあった。

 このチームは昨年、東京から約2000㌔離れた南鳥島沖でも、水深5500㍍を超える海底にCRCが広がっているのを発見。3000㍍よりも深い個所でCRCが確認されたのは初めてだった。

 CRCは海山の周辺を覆うように成長する鉱物で、コバルトやニッケルなどのレアメタルを高濃度で含有している。こうしたレアメタルはハイブリッド車やスマートフォンのバッテリーに使われるなど最先端のハイテク製品に欠かせないものとなっているが、日本はすべてを輸入に頼っている。

 これまでCRCは、近海では陸地から流入する堆積物で成長しないと言われていた。今回の発見は、それを覆すものだ。近海を拠点に、商業化に向けた掘削技術の研究開発に従来以上のスピードで取り組むこともできよう。

 日本の国土面積は約38万平方㌔で世界第61位だが、領海と排他的経済水域(EEZ)を合わせた面積は世界第6位の447万平方㌔だ。この海底にはCRCのほか、高圧・低温状態で天然ガスの主成分であるメタンが水と結合した「メタンハイドレート」や、銅、亜鉛、金などを含む「海底熱水鉱床」などのエネルギー・鉱物資源が豊富に存在している。

 メタンハイドレートは、EEZ内に日本の天然ガス消費量100年分の存在が確認されているという。2013年3月に愛知・三重両県沖の産出実験で海底から天然ガスを産出することに世界で初めて成功。現在、この海域で2度目の実験を進めている。

 やはりハイテク製品に欠かせないレアアースをめぐっては、10年9月に発生した中国漁船領海侵犯事件を受け、日本が需要の9割を頼っていた中国が対日輸出を停止したこともある。コバルトも産出国の情勢が不安定であるため、取引が滞ることが多い。資源の海外依存を減らすためにも、日本にとって海洋資源の商業化は大きな課題だと言える。

 ガス田では対抗措置を

 一方、東シナ海の日中中間線付近では中国が一方的にガス田の開発を進めている。中国のガス田施設は将来的には軍事利用される恐れもある。

 日中両政府は08年6月にガス田の共同開発で合意したが、中国は無視している。国益を守るため、日本は国際仲裁裁判所に提訴するなどの対抗措置を取るべきだ。