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米の通商政策、2国間協定よりTPP復帰を


 ロス米商務長官は、3月の貿易統計で日本やメキシコに対する貿易赤字が増加したことについて「米国はこの膨張した貿易赤字にはもはや耐えられない」と批判する声明を発表した。

 米労働者と企業を守るため、「通商相手との関係を再調整するのがトランプ政権の使命だ」とし、貿易の不均衡の見直しに強い意欲を示した。米国第一主義に基づく自由貿易協定(FTA)を含めた日本との2国間協議を促す狙いがあると言える。

 対日貿易赤字が増加

 ロス氏は4月の日米経済対話に合わせて訪日し、貿易不均衡の是正に向け2国間協議に意欲を示している。今回の声明は米国側の危機感を強調する異例の内容だとする向きもある。

 米国の3月の対日貿易赤字は64億9200万㌦で、2月の48億8000万㌦から33%増加。3月は対メキシコ貿易でも赤字額が前月比5・9%増えており、北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉を控える同国にも極めて厳しい批判を突き付けた。米国の貿易赤字の約半分は中国に対するものだ。しかし、今回は北朝鮮問題への協力を期待していることから「対中赤字は改善している」と批判のコメントを避けた。

 もっとも、単月の貿易統計は為替の変動などで数値の増減が激しい。2月の対日貿易赤字は前月比11・6%減で、3月は反動増の側面も大きい。1~3月期の対日貿易赤字は2016年10~12月期に比べ7・7%縮小している。トランプ米政権は、こうした数字にも目を向ける必要があろう。

 トランプ政権は環太平洋連携協定(TPP)から離脱し、「米国第一」を掲げて2国間協定にこだわっている。貿易赤字を減らすため、日本政府には農産物や自動車の市場開放を要求している。だが日本としては、TPPの合意以上の譲歩はできない。日本は米国の将来のTPP復帰を視野に、合意済みの内容を維持したまま米国以外の11カ国で発効させたい考えだ。

 高い水準での貿易・投資自由化を目指すTPPによって域内の緊密な経済関係が構築されれば、アジア太平洋地域の安全保障面でも大きな役割を果たし得る。貿易に不可欠なシーレーン(海上交通路)の安定を確保することも各国共通の利益となり、海洋進出で覇権拡大を目指す中国にブレーキをかけることもできる。

 日本はTPPの戦略的意義について米国の理解を得られるよう努める必要がある。米国も2国間協定よりもTPP復帰を考えるべきではないか。

 日本は雇用創出後押しを

 日米経済対話の共同声明では①貿易・投資のルールや課題に関する共通戦略②経済・構造政策での協力③雇用創出を促進するインフラなどの分野別協力――の3本の柱に基づいて協議を進め、「近いうちに」具体的成果を目指すと明記した。

 トランプ氏は2月末の議会演説で、1兆㌦規模のインフラ投資方針を示した。日本の技術力を生かした米国での高速鉄道整備や米国のエネルギー輸出といった個別分野での協力を通じ、米国内の雇用創出を後押ししていくことが求められる。

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