海底メタン、まずは生産技術の確立を


 次世代エネルギー資源として期待される「メタンハイドレート」が4年ぶりに愛知・三重両県沖で産出された。

 商業化への課題は多いが、まずは生産技術を着実に確立する必要がある。

日本近海に多量に埋蔵

 メタンハイドレートは、高圧・低温状態で天然ガスの主成分であるメタンが水と結合した物質。日本近海の海底に多量に埋蔵されており、両県沖の海域に存在するのは国内の天然ガス使用量の約10年分に相当するとの試算もある。開発に成功すれば海外資源への依存度引き下げにつながると期待されている「夢の純国産資源」だ。

 2013年3月に今回と同じ海域で行われた実験は、世界で初めて海底からの産出に成功したものの、設備に砂が混入するトラブルが発生し、6日間で生産を打ち切った。今回は3~4週間程度の継続を目指しているが、技術の確立にはさらに長期間の実験が欠かせない。一つずつ実績を積み重ねていくことが求められる。

 メタンハイドレートの商業化に向け、政府は10年後をめどに民間主導のプロジェクトを始める構想だ。しかし米国の「シェール革命」で、天然ガス価格は当面、低位で推移することが見込まれる。採算性確保に向け、いかに低コストで生産するかなど課題は多い。

 しかし日本のエネルギー安全保障強化のため、メタンハイドレートをはじめとする海洋資源の商業化は不可欠だ。日本の近海では、金、銀、銅などを含む海底熱水鉱床やレアメタル(希少金属)のコバルトを多く含む岩の塊、レアアース(希土類)を多く含む泥などが見つかっている。

 10年9月に発生した中国漁船領海侵犯事件を受け、日本が需要の9割を頼っていた中国が、レアアースの対日輸出を停止したこともある。資源やエネルギーの安定確保に向け、日本近海の海洋資源の開発を急ぐ必要がある。

 資源開発を進めるには周辺海域の安全維持が求められるが、この点でも懸念されるのは中国の動きだ。中国は日本最南端の沖ノ鳥島(東京都)について、排他的経済水域(EEZ)を設定できない「岩」に当たると主張している。

 沖ノ鳥島周辺の海域は、レアメタルなどが存在するとみられている。自国の戦略上の要衝でもある沖ノ鳥島付近で、中国が資源採掘に乗り出す可能性も否定できない。

 海洋進出を強める中国は沖縄県・尖閣諸島の領有権を一方的に主張しているが、これも周辺に石油が埋蔵されている可能性が高いことを指摘した国連の調査報告が出た後の1970年代初頭からだ。

 東シナ海の日中中間線付近でも一方的にガス田開発を続けており、ガス田施設が将来的に軍事利用される恐れもある。他国の正当な権益を侵害することは許されない。

離島管理を強化せよ

 政府は沖ノ鳥島や、周辺海域にレアアースが豊富に存在する日本最東端の南鳥島(東京都)などの管理を強化し、主権や資源を守る必要がある。