17年度予算案、内需主導の自律成長に十分か


 2017年度の政府予算案が閣議決定された。国の基本的な予算規模を示す一般会計総額は、97兆4547億円と5年連続で過去最大を更新した。

 子育て支援や研究開発の促進など脱デフレに向けた経済再生策に重点配分した形だが、厳しい財政を反映して中途半端な印象を否めず、物足りなさが残る。

 5年連続で過去最大更新

 一般会計総額のうち、国債費や地方交付税を除いた国の政策経費である一般歳出は、16年度当初比5305億円増の58兆3591億円。政府は財政健全化計画で一般歳出の伸びを16年度からの3年間で1兆6000億円(年約5300億円)に抑制する目安を掲げており、17年度もクリアした形である。

 特に32兆4735億円と最大の歳出項目である社会保障関係費では、健全化に向けた努力の跡がうかがえる。高齢化の進行で6400億円の増加が見込まれていた同関係費は、所得に応じた高齢者の医療費負担増や、高額薬「オプジーボ」の公定価格引き下げなどの改革で4997億円に伸びを抑えた。さらなる改革が望まれるところである。

 物足りないのは、安倍晋三政権が掲げる「1億総活躍社会の実現」や「働き方改革」への予算である。

 返済の必要がない給付型奨学金制度の創設は、17年度予算案で目玉政策の一つ。低所得世帯の大学生を対象に、国公立・私立や下宿・自宅の違いに応じ約2万人に月2万~4万円を支給するものだが、この支給額がその名に値する程度のものなのか。17年度は成績優秀な私大下宿生らに限って先行的に始め、18年度から本格的に実施するとしているが、未来への投資として一層の充実を求めたい。

 介護士や保育士などの処遇改善も、同様である。今予算案では952億円が投じられるが、こうした人材を増やすことは高齢化や少子化の進行への対策としても急務で、論をまたない。

 文字通り、未来への投資となる人工知能(AI)やロボットといった先端分野の研究開発などのための科学技術振興費は0・9%増。それを含む文教科学費が0・02%減の5兆3567億円という状況には、日本人ノーベル賞受賞者の嘆きが聞こえそうである。

 歳入面では、税収を1080億円増の57兆7120億円と見積もった。税外収入の増加で新規国債発行額は、622億円減の34兆3698億円と7年連続の減額である。

 16年度は年度前半の円高で、税収が見積もりを下回り、7年ぶりに年度途中の赤字国債発行を余儀なくされた。だが、成長による税収増によって経済再生と財政健全化を目指すという「アベノミクス」の方向性は間違っていない。小幅とはいえ、7年連続の新規国債発行減額はその成果である。

 海外要因の影響抑えよ

 悔やまれるのは、何と言っても景気を腰折れさせた14年度の消費税増税だが、ここに至っては経済再生に努めるほかない。

 トランプ次期米政権の政策に不透明な部分も少なくないだけに、海外要因に左右されにくい自律的成長に向け内需を強化したい。