消費増税2年半延期、内需喚起に努め強い経済を


 安倍晋三首相が来年4月に予定していた税率10%への消費税増税を2019年10月まで2年半延期することを表明した。

 景気がプラス成長とマイナス成長を繰り返す足踏み状態にあって増税を強行すれば、景気を腰折れさせ財政再建をも危うくする。延期は当然の判断だ。政府は延期する間に増税に耐え得る強い経済をつくり出すことに心血を注ぐべきである。

 「新しい判断」を表明

 安倍首相は前回の消費増税延期を表明した際、「リーマン・ショック級の出来事が起こらない限り、予定通り行う」と断言した。今回の会見では、リーマン・ショック級の出来事は生じていないことを認め、それでも延期を表明した。政策の変更となる「新しい判断」について、次の参院選で信を問うとした。

 首相がそう表明せざるを得ないのは、世界経済、特に新興国の経済減速もあるが、何より日本経済そのものの低迷である。プラス成長とマイナス成長を繰り返し足踏み状態が続く中で、消費税増税を果たして実施できるかという懸念である。

 消費税増税は過去2回、1997年と2014年にあった。両者とも財政が危機的状況だとして、その健全化のために実施したわけである。だが、その結果はどうであったか。

 14年の増税からは、まだ日が浅いが、それでも前述の通り。増税前の駆け込み需要もあり、景気はアベノミクスで回復傾向を示したが、増税はその勢いを止め、以後低迷が続く。97年の時は大幅な歳出削減も同時に実施され、厳しい財政緊縮策の下、その後の長期デフレのきっかけとなり、低成長による税収減と財政事情の悪化に見舞われた。

 どちらも、増税の経済への悪影響を過小評価し、その深刻さを見誤ったのである。14年の増税の際も本紙は反対し延期を求めたが、97年の経験は教訓として生かされなかった。

 増税延期の判断は今回で2回目である。政治的な意図は別にしても、2回とも教訓を生かした妥当な決断である。増税延期は財政健全化の放棄でもない。

 経済が低迷している状態で増税を強行すれば、今回は軽減税率の導入でダメージが緩和されるとはいえ4兆円強のデフレ効果があり、景気を腰折れさせ安倍政権の大目標であるデフレ脱却どころではなくなる。

 社会保障の安定財源となる消費税収は増えても、景気の悪化から他の税目の法人税や所得税が減って全体の税収が減少すれば、他の支出項目で赤字が増え、財政は逆に悪化してしまうわけである。

 安倍首相は会見で、増税で当てにしていた社会保障の充実は、他の財源を充てるもののできない部分があることを認めた。だからこそ、政府は景気を腰折れさせず税収を増加させる拡大均衡型のデフレ脱却に邁進(まいしん)せねばならない。

 大型対策具体化が不可欠

 増税延期は腰折れを防ぐだけである。首相が秋に講じると表明した、アベノミクスのエンジンとなる大型経済対策の具体化が不可欠である。赤字国債を発行せず、外国為替資金特別会計の資金など財源を工夫し、内需の喚起に努めたい。