三菱自動車の隠蔽体質の改善が急務だ


 三菱自動車が、軽自動車「eKワゴン」など4車種、計約62万5000台で、意図的に燃費性能を実際より5~10%程度良く見せる不正を行っていた。

 三菱自では2000年と04年にリコール(回収・無償修理)隠しが明らかになっている。隠蔽(いんぺい)体質の改善が急務だ

 13年から燃費を偽装

 燃費性能を偽っていたのは、三菱自が販売した「eKワゴン」「eKスペース」と、日産自動車向けに生産、供給した「デイズ」「デイズルークス」。不正は13年から続いており、16年3月末までの累計で、三菱自販売分が15万7000台、日産向け生産分が46万8000台に上る。

 不正は、日産の燃費測定で、国土交通省に届け出た走行抵抗値との乖離(かいり)を見つけたことから発覚。タイヤなどの走行抵抗値を実際より低めにする手口で燃費を実際より5~10%良く見せていた。「eKワゴン」の場合、ガソリン1㍑当たり30・4㌔と公表していたが、同3㌔ほど水増ししていたことになる。

 環境意識の向上で、燃費を自動車購入の際の決め手としている消費者は少なくない。不正は消費者への重大な背信行為だ。しかも4車種ともエコカー減税の対象だったが、不正の発覚で対象から外れる可能性もあるという。責任は極めて重い。

 組織ぐるみだったかどうかも含め、第三者による事実の徹底解明と責任者の厳正な処分を求めたい。

 三菱自をめぐっては00、04年と相次いでリコール隠しが発覚した。クラッチやハブの欠陥の放置によって、02年1月には横浜母子死傷事故、同年10月には山口県運転手激突死事故を引き起こし、元社長らが有罪判決を受けた。この影響で三菱自は消費者の信頼を失い、深刻な経営危機に陥った。

 しかし、この苦い教訓は生かされず、隠蔽体質による不正が繰り返された。今回の不正を受け、三菱自の相川哲郎社長は「全社員にコンプライアンス(法令順守)意識を持たせる難しさを感じている」と述べたが、自浄能力が欠けていると言わざるを得ない。

 不正の背景には、軽自動車の販売シェア拡大に向けた焦りがあったとの見方がある。景気低迷で普通・小型車の販売が伸び悩む中、三菱自や日産、ホンダなどが燃費の良い軽自動車市場に本格参入した。だが、ダイハツとスズキの「2強」が6割のシェアを握る一方、三菱自は約3%、日産も約10%にとどまる。

 ダイハツ、スズキ両社の車種では燃費が1㍑当たり30㌔以上のものが珍しくない。上位メーカーとの差を縮めるため、データを偽装したとみていい。

 しかし、このようなごまかしは通用しない。熊本地震が自動車生産に影響する中、今回の不正発覚で三菱自が大きな打撃を受けるのは必至だ。

 安全確保と正確な情報を

 自動車会社による性能試験については、15年9月に明らかになったVWの排ガス不正が記憶に新しい。国際的な販売競争が激化する中、こうした不正が今後も生じる可能性は否定できない。各社は何よりも自動車の安全確保と正確な情報提供に努めてほしい。