訪日外国人観光客増加の鍵握る情報の発信とサービス


 訪日外国人観光客増加のための政府の「明日の日本を支える観光ビジョン構想会議」(議長・安倍晋三首相)の初会合が開かれた。「2020年までに2000万人」という目標の達成の可能性が高くなったのを受け、新たな目標の設定や、実現のためのさまざまな課題について議論された。

訪日客の目標上積みへ

 観光庁によると今年の訪日外国人の数は、9月までに1448万人に達し、1900万人に届く勢いだ。

 安倍首相は会議で「2000万人は通過点だ。キーワードは地方と消費で、日本各地の魅力を世界のニーズに結び付ける。次なるステージのロードマップを示したい」と訪日外国人の目標上積みに意欲を示した。

 年間3000万人という新目標が上がっているが、これくらいは当然だろう。外国人観光客数最多のフランスは8370万人、中国は5560万人だ。

 訪日外国人が増える一方で、ホテルなど宿泊施設の不足という課題も出てきている。

 東京都や大阪府のホテルでは、稼働率が80%を超える状況が続き、今後不足する可能性が出てきた。一方で地方に多い和風の旅館は利用が伸び悩んでいる。いかに宿泊施設を確保し、また外国人観光客を地方に誘導するかが課題だ。

 これは主に、大手の宿泊予約サイトが、ホテル情報が中心で、小さな旅館は掲載されていないケースが多いためとみられる。外国人観光客とくに個人旅行者はほとんど、インターネットでホテルの予約を行う。

 観光庁は、全国の旅館をネットで検索し、予約できるシステムを構築する方針という。地方や日本旅館への誘客の鍵となる課題で、外国人旅行者のニーズや関心もよく研究して、便利で魅力あるサイトを作ってもらいたい。

 外国人の中には、日本文化、日本らしさを体験したいという願望がある。日本旅館は、その要望に応えうる魅力を持っている。一方、和式トイレなどに抵抗を感じるという声もある。こういう点は、官民で訪日客にアンケートするなどして、肌理の細かい対応を行うべきである。

 海外からの観光客は欧米諸国、アジア諸国を問わず、日本人以上にネット情報を利用して行動する。そういう点で、日本ではWi-Fiが繋(つな)がらない、環境が整備されていないという苦情は早急に解決すべき課題だ。Wi-Fi後進国というイメージをつくってはならない。

 情報の収集と発信が、訪日外国人のさらなる増加の鍵を握っているようにみえる。日本が「観光立国」へと浮上できるかどうかの鍵と言ってもいい。

 ホテルの不足を補うために、マンションなどの空き部屋を宿泊施設として活用する「民泊」を拡大すべきとの意見も出ている。実際利用は増えているが、無許可の民泊が摘発されるという問題も起きている。

民泊ルールは十分検討を

 当面の需要に対応するため、安易に民泊を拡大するのは問題だ。防犯面や居住者とのトラブルを避けるためにも、十分に検討した上で新しいルールを作るべきだ。

(11月15日付社説)