欠陥エアバッグ、後手の対応を猛省すべきだ


 自動車部品大手タカタがエアバッグ計3380万個の欠陥を認め、リコール(回収・無償修理)を全米に拡大した。米国で過去最大となるのは確実だ。

 欠陥エアバッグによって死亡事故も生じている。タカタは後手に回った対応を猛省しなければならない。

 飛散した金属片で死者も

 タカタ製エアバッグには膨らむ際、ガス発生装置の不具合で破裂する問題が生じていた。米国では飛散した金属片で運転者が死亡する事故が、少なくとも6件確認されている。

 タカタは当初、発生は高温多湿の環境に限られると主張し、リコールの全米拡大に慎重な姿勢を示していた。だが原因究明に向けた調査に非協力的だとして、2月に米運輸省道路交通安全局(NHTSA)から1日当たり1万4000㌦(約170万円)の罰金を科され、方針転換せざるを得なくなった。

 本来、ドライバーと同乗者を守るための装置が、その命を奪いかねない。極めて深刻な事態であるにもかかわらず、対応が後手に回ったことは、安全軽視と取られても仕方がない。

 タカタ製エアバッグは世界の市場の2割程度を占めており、日米欧の多くの自動車メーカーが採用していた。メーカーによる日本国内のリコール台数は約700万台に達しており、全世界でさらに拡大する可能性がある。タカタやメーカーは安全最優先の姿勢で臨まなければならない。

 タカタはガス発生装置の生産能力を、9月までに現在の月50万個から月100万個に倍増させる方針だ。ただリコール対象が大幅に拡大したため、交換部品の不足が一段と深刻化するとみられている。

 メーカーはリコールを早く終えるためにタカタ以外の発注を増やす考えを示している。しかし、全米でのリコール完了には数年はかかる見込みだ。完了までの期間を少しでも短縮するための努力と工夫をタカタやメーカーに求めたい。

 リコールの全米拡大を受け、タカタの高田重久会長兼社長は声明で「運転者の安全性向上のためにできることを全て行い、引き続きNHTSAや自動車メーカーと密接に協力していく」と述べた。しかし、これまで高田会長は米議会の公聴会や会見など、公の場で自ら説明を行ったことがない。このままでは信頼回復は難しく、企業イメージを一層傷つけかねない。

 タカタは2015年3月期の連結決算で、リコール関連費用がかさみ純損益が約295億円の赤字となった。16年3月期には黒字転換する見通しを表明していたが、リコール関連費用はさらに膨らむとみられる。また、北米ではタカタや自動車メーカーに対して集団訴訟が70件以上ある。裁判の結果次第では和解金などの負担も増えるため、経営の先行きは不透明だ。

 会長は公の場で説明を

 08年に米国でタカタ製エアバッグの欠陥を原因とするリコールが初めて実施されてから、既に6年以上が経過している。

 まずは高田会長が公の場で説明を行うべきだ。この問題に対するトップの姿勢を明示する必要がある。

(5月29日付社説)