株価2万円、実体経済改善へ政策強化を


 東京株式市場で日経平均株価が一時、ITバブル期の2000年4月以来15年ぶりに2万円台を付けた。一つの節目とは言えるが、昨年4月の消費税増税以降、景気回復の鍵を握る中間層などの個人消費の改善は遅れている。政府は実体経済の改善に向けた政策を強化すべきだ。

「官主導」との指摘も

 2万円台に上昇した今月10日は、前日の米国株高や為替の円安・ドル高などから買いが強まり、小売業や情報通信などの内需銘柄を中心に値上がりした。ただ、2万円を上回った後は、当面の利益を確保するための売りが優勢となり、終値は30円09銭安の1万9907円63銭と、4日ぶりに下落した。

 大台の一時回復について、政府は経済政策「アベノミクス」の成果と受け止め、デフレ脱却に向けた路線継続への追い風としたい考えだ。菅義偉官房長官は「よくここまできた」と歓迎した。

 しかし、市場関係者からは「官主導の熱狂だ」と危うさを指摘する声も出ている。今回の株高に関しては、安倍政権から企業に対する異例の賃上げ要請に加え、日銀の上場投資信託(ETF)買い入れ、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の株式運用比率拡大など、株価押し上げを意識したような政策や公的機関の動きが買い材料になっている。

 日銀が2年で2%の物価目標実現を掲げ、量的・質的金融緩和に踏み切ったことで、円安・株高が進んだ。しかし消費税増税などの影響で、実質GDP(国内総生産)は2四半期連続のマイナス成長に陥った。14年10~12月期にようやくプラスに転じたものの、年率換算で前期比1・5%増にとどまる。

 業績好調な大企業に対し、国内雇用の約7割を担う中小企業の置かれた状況は依然厳しい。今年の春闘では大企業で昨年を上回る大幅な賃上げ回答が相次いだが、地方や中小企業では賃上げの動きが鈍いままだ。

 増税や円安による物価上昇で家計の実質的な所得も減少しており、節約志向が続いている。総務省の家計調査では、2月の実質消費支出は前年同月比2・9%減で、株価上昇による恩恵はあまり及んでいない。

 17年4月には消費税率の再引き上げを控えている。それに耐え得る経済環境を整えられるかが問われている。

 当初予算では過去最大となる一般会計総額96兆3420億円の15年度予算がこのほど成立した。企業収益の拡大が賃金上昇や雇用拡大につながり、消費拡大や投資増加を通じて、企業収益の一層の増大に結び付く「経済の好循環」の実現を後押しするためにも円滑に執行しなければならない。

 これに先立って成立した14年度補正予算では、経済対策と地方創生を目的に自治体向けの交付金を盛り込んだ。財源を有効活用するには「プレミアム商品券」発行などで各自治体の創意工夫も求められる。

デフレ脱却に総力挙げよ

 ただ十分な額ではないため、状況次第ではさらなる後押しの検討も必要となろう。政府はデフレ脱却に総力を挙げて取り組むべきだ。

(4月㏫付社説)