北陸新幹線 観光立国、地方創生に弾みを


 北陸新幹線がきょう開業する。長野―金沢間が延伸することで、東京―金沢が乗り換えなしで最短2時間28分、東京―富山が2時間8分で結ばれる。北陸の人々にとっては、長年の悲願の実現である。

訪日客の選択肢広がる

 「和」の伝統美と最新技術の機能美をコンセプトにした車両のデザインも新しい時代を感じさせる。乗客は東京を出て1時間半ほどで、家々の黒い屋根瓦を目にし、日本海側へ出たことを実感するに違いない。列車が富山平野に入れば雪を頂いた雄大な立山連峰が迎えてくれる。短時間で、首都圏とは雰囲気の異なる地方に行けるのは大きな魅力だ。

 金沢は加賀藩の武家文化が息づくわが国有数の観光都市である。少し足を伸ばせば、世界農業遺産に登録された能登の里山里海があり、人気の和倉温泉(七尾市)や加賀温泉郷も近い。

 富山県は、ホタルイカなど富山湾の海の幸に恵まれ、立山黒部アルペンルートなどスケールの大きな観光が楽しめる。世界遺産の合掌造り集落・五箇山へも近い。新幹線駅ができる新潟県糸魚川市には、世界ジオパークがある。

 新幹線開業によって沿線の観光地は、観光客の増加が期待される。金沢駅周辺ではホテルやマンションが次々と完成。石川県は、首都圏からの観光客数の目標をこれまでの2倍の500万人としている。首都圏から北陸に向かう4~6月のツアー予約客数は、前年同期の約5倍に上っているという。

 ただ、新幹線の観光需用創出効果は、開業初年をピークに減少していくと言われる。リピーターをしっかりつかむ努力、工夫が求められよう。

 政府は日本を訪れる外国人の数を2020年に2000万人とする目標を掲げているが、その実現のためには地方への誘客が不可欠とされる。東京を訪れた外国人観光客が北陸に容易に足を伸ばせるようになれば、これまで京都・大阪などが主だった地方観光の選択肢が広がり、新たな魅力発見につながろう。

 そういう意味で、北陸新幹線開業を観光立国を一層推進するきっかけにすべきである。地元は外国人観光客の受け入れ態勢整備に、さらに力を入れてもらいたい。

 日本の大きな課題の一つである地方創生にも資するものにすべきである。「富山の薬売り」の伝統がある富山は、もともと製薬や化学工業が盛んだ。富山県内に本社機能を移転する大手企業もある。東京から余裕を持って日帰り出張できるようになれば、経済上の結び付きがこれまで以上に強くなることは当然だ。それをいかに、地方創生に繋げていくかが問題である。

 観光産業に勢いがつけば、地元での雇用拡大が期待される。一方、東京に近くなることが地方からの若い世代の流出を留めることになるのか、かえってそれを促すのかは未知数だ。

東京から移住促す施策を

 そういう両刃の剣の側面があることを念頭に置いて、沿線の地方では、東京圏からの移住を促し、若い世代を地元に定着させるための施策・アイデアを練ってほしい。

(3月14日付社説)