経済再生へ「加速」できるか


 昨年12月の衆院選で信任を得た形の安倍政権の経済政策「アベノミクス」。2年目の昨年は、影響を過小評価した消費税増税により景況悪化が長引き、実質GDP(国内総生産)は2期連続マイナス成長で、景気後退も懸念される。1年半延期された消費税再増税の実施まで2年余。アベノミクス3年目の今年は日本経済の再浮上、さらには本来の目的とするデフレ脱却に向けた環境を整えられるか、猶予のない重要な1年である。

増税や円安で消費不振

 昨年末に決定した3・5兆円規模の経済対策や2015年度税制改正大綱など、このところの安倍政権、特に首相官邸サイドは成長重視へ一際強い姿勢を示している。遡れば昨年11月、今年10月に予定していた10%への消費税再増税の延期を表明したこともその表れと言える。

 逆に言えば、それだけ消費税増税の影響を過小評価した財務省への不信が強くなったということか。増税実施後、経済の低迷と著しい税収不足・財政の悪化という現在のデフレを招いた前回1997年度の経験を教訓にしなかったからである。

 3・5兆円の経済対策については、バラマキを懸念する声も少なくないが、まずは消費税増税で痛めた経済を治癒し回復させる必要がある。しかも、過度の円安による、賃上げ以上の物価上昇が消費不振の傷を悪化させているから尚更である。選挙公約の通り、アベノミクスを「加速」させるのであれば、それなりの規模の対策が求められるのは当然で、以前に政権の強い意志の表れと評価したのはそのためである。

 15年度税制改正でも、官邸サイドが成長戦略の柱である法人税改革で財源難を理由に渋る与党税制調査会を押し切り、法人実効税率の下げ幅を15年度に2・51%、16年度までの2年間で3・29%とし、法人課税全体で減税(2年間で4000億円程度)を先行させた。「経済好循環の実現を目指し、経済成長を優先させるため」(甘利明経済財政担当相)である。

 もっとも、こうした政府の対策や成長戦略だけでは、デフレ脱却は果たせない。実質賃金は16カ月連続マイナスで、消費不振の主要な要因になっている。プラスにするには、直接的には何よりも企業の継続的な賃上げが欠かせない。

 前年に続き開かれた、昨年12月の政府や経済界、労働界の代表による政労使会議で、経済界が今春闘での賃上げに「最大限の努力」を払うことを約束した。どこまで実現し、また、それが中小企業にどれほど波及していくか。要注目である。

 新年も即席めんや食用油、紙製品など、昨年同様に生活必需品の値上げが相次ぐ。賃上げの動向は個人消費回復の行方、ひいてはアベノミクスの今後を大きく左右していこう。

慎重さ必要な緩和政策

 要警戒は円安の動きである。円安は輸出関連企業の収益向上にはプラスだが、最近はそれ以外の中小など内需依存企業への悪影響が強く出てきている。物価の一段の上昇につながり、消費回復にもマイナスに作用する恐れがある。日銀の緩和政策にも慎重さが求められる。

(1月5日付社説)