緊急を要す消費・円安対策


 12月の日銀短観は、大企業製造業で業況判断が2四半期ぶりに悪化し、先行きは大企業、中小企業を問わず、製造業・非製造業とも軒並み悪化の見通しになった。

 2期連続のマイナス成長が続く日本経済をいかに立て直し、経済の好循環を実現するか。デフレ脱却へ、近く発足する第3次安倍政権の真価が問われる。

 日銀短観で先行き悪化

 企業の景況感は規模や業種によりまちまちであるが、3カ月後の先行きはいずれも悪化の見通しである。10月末の追加金融緩和以降、急速に進む円安などを受け、企業は先行き慎重な見方を強めている。今年度の設備投資計画は大企業全産業で前年度比8・9%増と前回調査(8・6%増)から上方修正されたが、予断は禁物である。

 国内総生産(GDP)は2期連続のマイナス成長が確認され、12月短観でも楽観できない現状が明らかになった。安倍晋三首相が示した消費税再増税延期の判断は妥当だったということである。

 問題は4月の消費税増税で傷んだ国内経済をいかに立て直すかである。7~9月期GDPは景気の牽引(けんいん)役が不在であることを示した。増税による消費低迷が経済の負の循環の起点となり、設備投資などでの企業の消極姿勢にも繋(つな)がっている。

 さらに日銀の追加緩和によって円安が一段と進み、それが食料品を中心とした生活必需品の相次ぐ値上げを招いた。実質賃金は16カ月連続でマイナスとなり、家計や中小企業など輸出関連以外の企業の大きな負担になっている。

 これらを勘案すれば、まずは消費対策と円安対策が重要である。安倍首相は衆院選後の会見で「個人消費をてこ入れし、地方経済を底上げしなければならない。年内に経済対策を取りまとめる」と述べ、政府・与党は2014年度補正予算案に盛り込む経済対策の策定の検討を本格化させた。

 消費喚起策では、自治体や商工団体が発行する、購入金額を上回る買い物ができるプレミアム付き商品券や、ガソリン・灯油購入助成などへの支援に国が臨時の交付金を創設する。また、冷え込む住宅市場への活性化策に「住宅エコポイント」の復活や、省エネ性能や耐震性に優れた住宅を対象に長期固定金利の住宅ローン「フラット35S」の金利優遇幅を拡大することなどが検討されている。

 8%への消費税増税に際して、低所得者対策に取られた「簡素な給付措置」(1回限りの総額3000億円)が焼け石に水だったことを反省し、規模は3兆円台が想定されているが、これで十分か。政府は経済対策を27日にも、15年度予算案は年明けの1月半ばに閣議決定する。

企業の賃上げ支援を

 実質賃金のプラスには、物価上昇以上の賃上げが不可欠。政労使会議では、経営側から賃上げへ「最大限の努力」が表明された。今後は企業の対応次第だが、設備投資を促す減税などとともにどう支援するかである。あとは円安の一段の進行をどう抑えるかで、日銀の対応には物価目標達成と同様に、円安の悪影響への視点も欠かせない。

(12月19日付社説)