米国はデフォルト回避で同盟国の不信招くな


 米国でデフォルト(債務不履行)を回避するために債務上限を引き上げるとともに、政府機関再開に向けて暫定予算を盛り込んだ法案が成立した。これによって2週間ぶりに行政サービスが正常化された。

大統領が国際会議欠席

 ルー米財務長官は「危機解決に向けた議会の超党派での取り組みを歓迎する」と表明した。超党派政治は切羽詰まった事態を打開する際に、しばしば米国で見られたものである。

 超党派で可決した法案は、来年2月7日まで追加の借り入れを認めることで債務上限を引き上げるとともに、1月15日までの暫定予算を成立させるもの。また、来年9月までの予算案や中期的な財政赤字削減案について協議する超党派委員会の設置などを骨子とする。

 米民主、共和両党は新たな予算協議に入ったが、次の交渉期限である12月までに本格合意にこぎ着けるかは、現状では不透明なままである。

 オバマ大統領は、米国民の政治不信が高まったことを念頭に「われわれは信頼を取り戻さなければならない」と訴えた。上下両院で多数派が異なる「ねじれ」は、米国では決して珍しいことではない。オバマ政権下では議会の機能不全が顕著となった。大統領のリーダーシップが、これほど必要とされている時はない。

 デフォルトを当面回避できたとはいえ、問題の先送りにすぎず、いずれ再燃する。デフォルトに陥れば、米国債や株の価格が暴落し、リーマン・ショックを超える大不況に突入する恐れがあった。大量に米国債を保有する日本にとっては極めて深刻な事態となる。

 米調査会社IHSによれば、米経済が16日間にわたる米政府機関の閉鎖によって被った損失は、200億ドル(約2兆円)を超える可能性がある。今年10~12月期の米経済成長見通しは0・6ポイント押し下げられるという。

 ヘーゲル米国防長官は「同盟国からは、米国が同盟上の責任を果たせるのかという懸念の声が上がっており、安全保障に大きな影響を与えかねない」と語り、このままでは同盟国からの信用を失いかねず、米国の安全保障を脅かすという認識を示した。率直な発言とはいえ、同盟国は疑心暗鬼になりかねない。

 政府機関の一部閉鎖とデフォルト危機のため、今月上旬のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議と東アジアサミットへの出席を見合わせたオバマ大統領は「世界におけるわが国の信頼を傷つけた」と、外交への影響を率直に認めた。

 また、20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は「米国は短期的な財政の不確実性に対処するために緊急の行動を取る必要がある」との文言を声明文に盛り込んだ。

国際社会での責任自覚を

 国内の混乱が露呈し、それが外交に飛び火し、国際社会における米国の存在感が低下している。オバマ大統領の任期はあと3年数カ月。2期目の政権が始まったばかりである。レームダックといわれるにはまだ早過ぎる。オバマ政権は国際社会における米国の責任を一層自覚すべきである。

(10月20付け社説)